複素スカラー場の正準交換関係の計算1
「ここで、の正準交換関係に上式を代入し、の関係を用いると、次のようになります」
「次に、上式の括弧[ ]内を計算していきます」
複素スカラー場の共役運動量密度
「次は、問題2.2bです」
問題2.2b:
生成・消滅演算子を導入することによって、ハミルトニアンを対角化せよ。また、この理論が質量の2組の粒子を含むことを示せ。
「以前、クライン-ゴルドン場をフーリエ展開して、生成演算子と消滅演算子で表しました」
(2.25)
「複素スカラー場の場合も、同様にフーリエ展開により、生成・消滅演算子で表すことができます」
「ただし、複素スカラー場の場合、の2種類の場があるため、生成・消滅演算子だけでは十分に表現することができません。そこで、もう1組の生成・消滅演算子が必要となります。ここで、の関係を用いると、複素スカラー場から、共役運動量密度の式を導くことができます」
複素スカラー場の作用とラグランジアン
問題2.2
「問題2.1を解いたので、次は問題2.2を解きましょう。問題2.2では、クライン‐ゴルドン場に従う複素数値のスカラー場の場の理論について考えてみます。この理論の作用は、次のようになります」
「基本的な力学変数として、場の実数部分と虚数部分を考えるより、2種類の場およびを考えることによって、この理論を分析すると一番簡単になります。問題aは次のとおりです」
問題a:
場およびの共役運動量および正準交換関係を導け。また、ハミルトニアンが、次のようになることを示せ。
「それでは実際に問題を解いてみましょう。ラグランジアンの作用積分Sは、次の(2.1)式のように書くことができることは以前お話しました」
(2.1)
「それゆえ、上の作用Sのラグランジアンは、次のように書くことができます」
エネルギー・運動量テンソルの式から電磁気の運動量密度の式の導出
「次に、運動量密度の関係式を求めてみましょう。場によって運ばれる(物理的な)運動量は、次の(2.19)式のように表せることは以前お話しました」
(2.19)
「そこで、エネルギー・運動量テンソルにおいて、添字とした場合の計算をしてみましょう」
「上の1行目から2行目の式変形には、クロネッカーのデルタにおいて、のとき0になるという関係を用いました。さらに、として、計算を進めてみます」
「上式2行目から3行目への式変形において、エネルギー・運動量テンソルの式の各項に計量テンソルをかけて、各項の添字を上げ下げしました。また、最後の行の式変形において、の関係を用いました。最後に、の関係およびの関係を代入し、レヴィ=チヴィタ記号の外積の定義を用いると、次のようになります」
「上式をとおくと、これは電磁気の運動量密度の式に他なりません」
テンソルの添字の上げ下げと符号の関係
「でも、なんでの上付き添字を下付き添字にすると、のように符号がマイナスからプラスに反転するのよ?」
一宮が訊ねた。
「通常、の上付き添字を下付き添字にするには、計量テンソルをかける必要がありますが、ミンコフスキー空間の計量テンソルの場合、添字のいずれか一方が0の場合と0以外の場合とで、符号が異なります」
「例えば、の上付き添字を下付き添字にする操作は、ちょうど計量テンソルをかける操作に相当するため、となって、のように符号が反転するのです」
↓ をかける
「一方、の上付き添字を下付き添字にする操作は、ちょうど計量テンソルをかける操作に相当するため、となって、のように符号は反転しません」
「それじゃ、のように、上付き添字の一方だけ下付き添字にした場合はどうなるのよ?」
「その場合は、ちょうど計量テンソルをかける操作に相当するため、となって、のように符号が反転します。一方、0の上付き添字だけ下付き添字にする操作は、ちょうど計量テンソルをかける操作に相当するため、となって、のように符号が反転しません」
添字を上付きから下付きに変える場合:
↓ をかけるので符号が反転する
添字を上付きから下付きに変える場合:
↓ をかけるので符号は反転しない
「ただし、上の関係はミンコフスキー空間において成り立つ関係であり、実際にはどのような空間の計量テンソルを考慮するかによって異なります。また、同じミンコフスキー空間でも、下のようにをマイナス符号、をプラス符号と定義することもあるので注意してください」