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スーパーサイエンスガール

日々科学と格闘する理系高校生達の超絶難解な日常。

スーパーサイエンス団、略してSS団の超絶難解な日常

この物語の登場人物
一宮(いちのみや):天上天下唯我独尊がモットーの主人公。K高校始まって以来の超絶美少女だが、性格にかなりクセのある高校1年生。
俺(おれ):しがない脇役にして噛ませ犬。計算が得意な以外これといった取り柄もない平凡な高校1年生。

「わたしに解けない問題なんて、この世に存在しないわ!」

勝ち誇ったような笑みを浮かべながら、一宮(いちのみや)がいった。よくもまあ、これだけ自信満々にいえるものだ。その天まで届くようなお前の自信の百万分の1くらいを俺にも分けてくれ。

「そこまで言うのなら、ひとつ問題を解いてもらおうか」
そういって、俺は本棚から1冊の分厚い本を取り出した。

一宮は、両手の拳を固め、ボクシングの構えを見せた。お前は何をやってるんだ……。見た目にも鈍器として十分殺傷力のありそうな分厚い本をもった俺と異種格闘戦でもするつもりか?

「オーケー! 用意はいいわ!」

俺は本を手に取ると、頁を開き、英文と数式がびっしり書き込まれた難解な中身を確認した。これはアメリカの大学院で使用されているスタンダードな教科書だ。こいつの鼻持ちならない自信を砕くには、これくらいの難易度がちょうどいいだろう。

「それじゃ、一つ目の問題だ」

図1.1
f:id:Dreistein:20140920202753p:plain

「何よこれ?」
一宮は不審そうな目つきで俺を見つめた。

「見てのとおりだ」
俺は、あえてそっけなく突き放すように答えた。
「見ても分からないから、訊いているの!」
一宮は怒ったように唇をとがらせた。

「それなら説明するが、これは電子と陽電子対消滅して、ミュー粒子と反ミュー粒子が対生成した様子を示す図だ。お前、まさか『知らない』なんて言うのじゃないだろうな?」
「し、知ってるわよ! 馬鹿にしないでね!」
心なしか一宮の声が震えている。

ふん、知ってるだと? 嘘つけ! たかだか16歳かそこらの女子高生に、超絶難解な物理学が理解できるわけがない。常識的に考えてもありえない。仮に、1万回タイムループしたとしても、こいつが偶然問題を解いてしまうなどというトンデモ現象は万に一つも起こらないだろう。

「いいから、説明を続けなさい!」
一宮は、内心の動揺を隠そうとするかのように威圧した。

俺は一宮に問題の説明をした。

「この図1.1は、運動量の電子 e^+ と、運動量p’陽電子 e^-とが真っ正面から衝突して対消滅した後、電子 e^- の進行方向と角度 \thetaだけずれた方向に運動量kのミュー粒子 \mu^-と運動量k’ \mu^+ 粒子とが対生成した後、互いに遠ざかっていく様子を表したものだ」

さきほどまでの自信にあふれきった一宮の顔色がみるみるうちに青ざめていった。ふ、どんなに意気込んでいても、しょせんは女子高生。物理学をなめるなよ!