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スーパーサイエンスガール

日々科学と格闘する理系高校生達の超絶難解な日常。

なぜ散乱確率を求めるのか?

「科学によって宇宙の真相を明らかにするという木花ちゃんの考えはよく分かったわ。でも、微分散乱断面積を求めることと、宇宙の真相と何の関係があるのよ?」

微分散乱断面積\frac{d\sigma}{d\Omega}:微小な立体角 d\Omegaに粒子が散乱される散乱確率をあらわしたもの

 一宮が疑問を口にした。越野さんは少し考え込むような表情をしてから言った。

「一宮さんは、ビリヤードをされたことはありますか?」

「ビリヤード? 自慢じゃないけど、こう見えても、あたしはビリヤードにかけてはプロ級の腕をもっているわよ!」
 一宮は、右手でビリヤードのキューのグリップを握るような手つきをして、俺の頭を狙い撃つように、左手を勢いよく動かしてショットした。
「ブレイクショット!」
俺をビリヤードの球代わりにするんじゃない!

「ビリヤードでは、的(まと)となる15個の球(たま)を正三角形状に並べて、これら15個の球に向けてキューで球を飛ばします。的となる15個の球を的球(まとだま)と呼び、キューで飛ばす球を手球(てだま)と呼びます」

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「また、的球が存在しなければ、手球はそのまま直進します」

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「一方、手球が的球に衝突すると、手球が進む方向が変わることがあります。いわば、手球が的球によって『散乱』されるのです」

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「手球の散乱方向は、的球の数や配置によって大きく変わります。例えば、同じ15個の的球を三角形状に並べた場合と、逆三角形状に並べた場合とでは、的球に衝突した後に手球が散乱される方向が異なりますよね」

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「また、鉄や鉛のような重い材質でできた的球の場合、普通の合成樹脂製の的球に当てた場合と異なる方向に手球が散乱される確率が高くなります」

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「このように、手球が散乱される方向は、的球の数や配置、質量によって大きく異なるのです。逆に考えると、100個の手球を的球にぶつけたときに手球が散乱される確率を詳しく調べることによって、的球の数や配置、質量を推測することができます。これを応用すれば、粒子をターゲットにぶつけたときの散乱確率から、ターゲットの構造を推測することができるのです」

粒子をターゲットにぶつけたときの散乱確率から、ターゲットの構造を推測することができる