スーパーサイエンスガール

日々科学と格闘する理系高校生達の超絶難解な日常。

ディラックのデルタ関数とは

散乱の微小確率: d\sigma=\frac{|\langle\,f\mid \hat{S} \mid i\,\rangle|^2}{\langle\,i\mid i\,\rangle}\frac{d\bf{p}}{(2\pi)^32E_p} \frac{d\bf{k}}{(2\pi)^32E_k}

「ところで、分子のブラケット \langle\,f\mid \hat{S} \mid i\,\rangleは、散乱振幅 Mを使って、次のように書くことができます」

\langle\,f\mid \hat{S} \mid i\,\rangle=(2\pi)^4\delta(k+k^\prime-p-p^\prime)M

「ここで、\delta(x)は、デルタ関数と呼ばれる関数です。\deltaは、dに相当するギリシャ語のアルファベットであり「デルタ」と発音します。デルタ関数は、イギリスの理論物理学者であるP.A.M.ディラックが最初に定義して量子力学の定式化に用いたことから、ディラックデルタとも呼ばれます。デルタ関数は、下図のように x=0 \delta(x)=1、それ以外の部分(x\neq 0)では  \delta(x)=0となる関数です」

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「もっとも厳密には、関数ではなく、超関数と呼ばれるものですが。ディラックデルタ関数は、ある特定のxの値のみを取り出したいときにしばしば用いられます。例えば、 \delta(k+k^\prime-p-p^\prime)の意味は、 k+k^\prime-p-p^\prime=0、すなわち、衝突前の運動量の和p+p^\primeと衝突後の運動量の和 k+k^\primeが等しい場合に  \delta(k+k^\prime-p-p^\prime)=1となり、それ以外の場合には  \delta(k+k^\prime-p-p^\prime)=0となることを示しています」

 k+k^\prime=p+p^\prime(粒子の衝突前後で運動量が保存される)の場合、 \delta(k+k^\prime-p-p^\prime)=1
 k+k^\prime\neq p+p^\primeの場合、 \delta(k+k^\prime-p-p^\prime)=0
 ↓
粒子の衝突前後の運動量が保存される場合にのみ散乱が生じる

「いいかえれば、粒子の衝突前後の運動量が保存される場合にのみ散乱が生じることをあらわすために、ディラックデルタ関数を用いるというわけです」

図1.1
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