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スーパーサイエンスガール

日々科学と格闘する理系高校生達の超絶難解な日常。

ベッセル関数とは

相対論的な粒子の確率振幅U(t)
{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
U(t)&=&\frac{1}{2\pi^2{|\bf{x}}-{\bf{x}}_0|}\int_0^\infty dp\, pe^{-it\sqrt{p^2+m^2}}\sin{(p|{\bf{x}}-{\bf{x}}_0|)}\\
&=&\frac{itm^2}{2\pi^2(|{\bf{x}}-{\bf{x}}_0|^2-t^2)}K_2\big(m\sqrt{|{\bf{x}}-{\bf{x}}_0|^2-t^2}\big)\\
\end{eqnarray}
}

「上の式において、 K_\nu(x)は、第2種変形ベッセル関数と呼ばれる」
「第2種変形ベッセル関数?」
 一宮の質問に答える代わりに、武者さんは黙ってMacBook Airのキーを叩き、ターミナルを起動させた。
「何をやってるのよ?」
「いま、IMSLライブラリから特殊函数Fortranサブルーチンを呼び出している」
「理系の人間って、ときどき何を言ってるのか意味不明よね。ちゃんと、普通の『日本語』で話してほしいわ」
 一宮が不満そうに愚痴をこぼした。

 武者さんは、ディスプレイに視線を固定したまま、神業ともいえるようなスピードでキーを打ち込んだかと思うと、gnuplotにグラフが描き出された。
 \nu=2のときの第2種変形ベッセル関数 K_2(x)のグラフは、次のようになる」

第2種変形ベッセル関数 K_2(x)のグラフ
f:id:Dreistein:20141221080353p:plain

「グラフなんか見てもさっぱり分からないわ! そもそも『ベッセル関数』って何よ?」
 憤慨する一宮に、越野さんが割って入った。
「ベッセル関数は、スイスの数学者ダニエル・ベルヌーイによって定義され、ドイツの数学者・天文学者のフリードリッヒ・ベッセルによって一般化された関数です。ベッセル関数は、以下のベッセルの微分方程式を満たす関数です」

ベッセルの微分方程式
{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\bigg[\frac{d^2}{dz^2}+\frac{1}{z}\frac{d}{dz}+\bigg(1-\frac{\nu^2}{z^2}\bigg)\bigg]C_\nu(z)=0
\end{eqnarray}
}

「上の式において、 \nuは、任意の複素数であり、次数と呼ばれます。ベッセル関数のうち、最も重要なものは、円柱関数(cylinder function)と呼ばれる関数です」
「円柱関数?」
「円柱関数という言葉は、下図のような円柱座標において、電荷分布のない一様な媒質中の静電ポテンシャルや、定常的な熱伝導の場合の温度分布などをあらわすラプラス方程式を解くと、しばしば解として現れることに由来します」

円柱座標
f:id:Dreistein:20141223093257p:plain

「なんで円柱座標で解くと、ベッセル関数が現れるのよ?」
「例えば、1次元の弦を振動させると、節がいくつかある振動が現れますよね。これはsin関数やcos関数などの三角関数で表すことができます」

一次元の弦の振動は、sin関数やcos関数などの三角関数で表される
f:id:Dreistein:20141226051328p:plain

「ところが、円筒状の容器に水を入れた後で、容器の側面を叩いて水を振動させると、同心円状に広がる波(定在波)が水面に現れます。この水面の振動の高さを容器の中心から外側に向かって順にプロットしていくと、ベッセル関数が現れるのです」

円筒状の容器内の水の振動には、ベッセル関数(円柱関数)が現れる
(実線は、振動の山、破線は振動の谷を表す)
f:id:Dreistein:20141226051337p:plain

「一方、次の微分方程式を満たす関数は、球ベッセル関数(Spherical Bessel function)と呼ばれます」

球ベッセル関数の微分方程式
{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\bigg[\frac{d^2}{dz^2}+\frac{2}{z}\frac{d}{dz}+\bigg\{1-\frac{n(n+1)}{z^2}\bigg\}\bigg]S_n(z)=0
\end{eqnarray}
}

「球ベッセル関数という言葉は、下図のような球座標において、電磁放射など、特定の振動数で振動する波動の方程式を解くときの基本方程式であるヘルムホルツ方程式の動径方向rの解を解くと、解として現れることに由来します」

球座標
f:id:Dreistein:20141223093312p:plain

「球の場合も、円柱の場合と同様に、中心から同心球状に広がる波の振動のパターンに球ベッセル関数が現れます」

中心から同心球状に広がる波の振動には、球ベッセル関数が現れる
(実線は、振動の山、破線は振動の谷を表す)
f:id:Dreistein:20141226053649p:plain

「それゆえ、物理で扱うベッセル関数としては、同心円状または同心球状に広がる波のように、軸対称または点対称の系を取り扱うときに、半径方向の波の振動のパターンとして現れる関数であるとイメージするといいです」

物理で扱うベッセル関数:同心円状または同心球状に広がる波のような、軸対称または点対称の系を取り扱うときに、半径方向の波の振動のパターンとして現れる関数

「実際、ベッセル関数の名前の由来になったフリードリッヒ・ベッセルが、惑星運動論において、太陽の周りを回る惑星の軌道を2体問題として扱うケプラー方程式を解くために、ベッセル関数を用いたという経緯があります」
「要するに、ベッセル関数って、1次元のsin関数とcos関数が円筒の世界や球状の世界でパワーアップしたものというわけね」
「ただし、上の説明は、あくまでベッセル関数の一部の例を表したものにすぎません。上の説明は、おおまかなイメージをつかむにはよいのですが、ベッセル関数は、一般的には、複素数zの関数なので、通常はイメージすることはできないことに注意してください」