スーパーサイエンスガール

日々科学と格闘する理系高校生達の超絶難解な日常。

停留値法とは

相対論的な粒子の確率振幅U(t)
{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
U(t)&=&\frac{1}{2\pi^2{|\bf{x}}-{\bf{x}}_0|}\int_0^\infty dp\, p\sin{(p|{\bf{x}}-{\bf{x}}_0|)}e^{-it\sqrt{p^2+m^2}}\\
\end{eqnarray}
}

「次に、位相関数 px-t\sqrt{p^2+m^2}を考えます。前回、波の位相とは、時間とともに周期的に変化する波において、波の変化の段階(フェーズ)を表す指標となる角度であり、 \sin{\theta} e^{i\theta} \thetaに相当するという話をしました」

波の位相:時間とともに周期的に変化する波において、波の変化の段階(フェーズ)を表す指標となる角度
 \sin{\theta} e^{i\theta} \thetaに相当)

「位相関数 px-t\sqrt{p^2+m^2}は、相対論的な粒子の確率振幅U(t)から、この \thetaに相当する部分を抜き出した関数ですが、この位相関数の振る舞いを調べることによって、波の変化の様子を知ることができます。つまり、波の位相の変化が大きいときは、波の変化が激しくなり、逆に、波の位相の変化が小さいときは、波の変化も緩やかなものとなります」

波の位相の変化が大きい→波の変化が激しい
波の位相の変化が小さい→波の変化が緩やか

「これは、先ほどの時計の例において、時計の針の回転が速いときは、時計の針の影がつくる波の上下の動きも速くなり、一方、時計の針の回転が遅いときは、時計の針の影がつくる波の上下の動きも遅くなることに対応します」

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「ところで、U(t)は、運動量pについて、0から \inftyまでの積分をとっています。ここで、運動量pを0から増加させていったとき、位相関数 f(p)の変化が大きいところでは、U(t)の被積分関数の波の変化も激しくなります。このとき、波の山の部分と谷の部分とが、プラスとマイナスで打ち消し合ってしまうため、積分すると、それらの波の寄与はほとんどゼロになります。一方、位相関数 f(p)の変化が小さいところでは、波の変化も緩やかになるため、積分しても打ち消しあわずに残ります」

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「このように、位相の変化が小さいところでは、波の変化も緩やかになるため、積分の寄与が大きく現れ、位相の変化が大きいところでは、波の変化が激しくなるため、積分の寄与が小さくなることが分かります。特に、位相の変化がゼロになる値を、停留値(stationary value)と呼びます。振動する波の関数において積分をおこなうと、停留値の近傍の値が大きく残り、その他の部分の寄与は、波の山と谷とが打ち消しあってプラスマイナスゼロになります。このように、振動する関数の積分計算において、位相の変化の大きい部分の積分の寄与が小さいものとし、位相の変化の小さい部分の積分の寄与のみが残るものとする近似計算を停留値法と呼びます」

停留値法(method of stationary phase):振動する関数の積分計算において、位相の変化の大きい部分の積分の寄与が小さいものとし、位相の変化の小さい部分の積分の寄与のみが残るものとする近似計算