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スーパーサイエンスガール

日々科学と格闘する理系高校生達の超絶難解な日常。

停留値法による近似計算の例

f:id:Dreistein:20150109054830p:plain

 石原は満足そうに笑みを浮かべながら、俺たち一人一人をゆっくりと見渡した。
「停留値法においては、停留値 p^\primeの近傍の波の位相の変化は緩やかなため、その積分の寄与が大きく現れ、一方、停留値 p^\prime以外の波の位相の変化は激しいため、波が互いに打ち消し合ってその積分の寄与がほとんど無視することができます。だから、停留値 p^\primeからの積分の寄与と比べれば、それ以外の積分路OBおよび積分路AB上の積分の寄与を無視できるものと近似します」

停留値法による近似
停留値 p^\primeの近傍の波の位相の変化は緩やか→積分の寄与が大きく現れる
停留値 p^\prime以外の波の位相の変化は激しい→積分の寄与は無視できる
 ↓
停留値 p^\primeからの積分の寄与と比べれば、それ以外の積分路OBおよび積分路AB上の積分の寄与を無視できる

「それゆえ、積分路OB上の積分は、停留値 p^\primeの値のみ打ち消し合わずに残るものと考えて、次のように書くことができます」

{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\int_{OB} F(z)dz&\sim&\mid F(z)\mid_{z=p^\prime}\\
(ただし、F(z)&=&z\sin{(z|{\bf{x}}-{\bf{x}}_0|)}e^{-it\sqrt{z^2+m^2}})
\end{eqnarray}
}

「これから、求める積分は、次のように近似することができます」

{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\int_0^\infty dp\, p\sin{(p|{\bf{x}}-{\bf{x}}_0|)}e^{-it\sqrt{p^2+m^2}}
&=&\int_{OB} F(z)dz-\int_{AB} F(z)dz\\
&\sim&\mid F(z)\mid_{z=p^\prime}\\
\end{eqnarray}
}

「ところで、F(z)は、オイラーの関係式を使って、次のように書くことができます」

{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
F(z)&=&z\sin{(z|{\bf{x}}-{\bf{x}}_0|)}e^{-it\sqrt{z^2+m^2}}\\
&=& z\frac{e^{iz|{\bf{x}}-{\bf{x}}_0|}-e^{-iz|{\bf{x}}-{\bf{x}}_0|}}{2i}e^{-it\sqrt{z^2+m^2}}\\
\end{eqnarray}
}

「ここで、停留値 p^\prime=imx/\sqrt{x^2-t^2}は、停留値を求めるきっかけとなった位相関数 f(p)=px-t\sqrt{p^2+m^2}の式において、 pxの符号をプラスとしたことを考えると、これは上の e^{iz|{\bf{x}}-{\bf{x}}_0|}の項に対応するものであることが分かります。それゆえ、もう一方の e^{-iz|{\bf{x}}-{\bf{x}}_0|}の項の寄与は無視できるものとして、F(z)に z=p^\primeを代入すると、次のようになります」

{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
F(p^\prime)&=&p^\prime\sin{(p^\prime|{\bf{x}}-{\bf{x}}_0|)}e^{-it\sqrt{p^{\prime 2}+m^2}}\\
&\sim&p^\prime e^{ip^\prime|{\bf{x}}-{\bf{x}}_0|}e^{-it\sqrt{p^{\prime 2}+m^2}}\\
&\sim&p^\prime e^{i\{p^\prime x-t\sqrt{p^{\prime 2}+m^2}\}}
\end{eqnarray}
}

「なお、光円錐の外側の領域( x\gg t)において、 xは大きい値であると考えられるので、定数 x_0の項を無視できるものとしました。指数関数の変数 i\{p^\prime x-t\sqrt{p^{^\prime 2}+m^2}\}のうち、 \sqrt{p^{^\prime 2}+m^2}の計算は次のようになります」


{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
p^{^\prime 2}+m^2&=&\frac{-m^2x^2}{x^2-t^2}+m^2\\
&=&\frac{-m^2x^2+m^2x^2-m^2t^2}{x^2-t^2}\\
&=&-\frac{m^2t^2}{x^2-t^2}\\
\therefore\, \sqrt{p^{^\prime 2}+m^2}&=&\frac{imt}{\sqrt{x^2-t^2}}
\end{eqnarray}
}

「それゆえ、指数関数の変数からiを除いた p^\prime x-t\sqrt{p^{^\prime 2}+m^2}の計算は次のようになります」


{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
p^\prime x-t\sqrt{p^{^\prime 2}+m^2}&=&\frac{imx^2}{\sqrt{x^2-t^2}}-\frac{\pm imt^2}{\sqrt{x^2-t^2}}\\
&=&\frac{im(x^2-t^2)}{\sqrt{x^2-t^2}}\\
&=&im\sqrt{x^2-t^2}
\end{eqnarray}
}

「また、光円錐の外側の領域( x\gg t)において、指数関数の係数は、 p^\prime=imx/\sqrt{x^2-t^2}\sim imとなることから、相対論的な自由粒子の確率振幅U(t)の値は結局、次のように近似できることが分かります」


{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
U(t)&\sim&\frac{im}{2\pi^2\mid{\bf{x}}-{\bf{x}}_0\mid} e^{-m\sqrt{x^2-t^2}}\\
&\sim& e^{-m\sqrt{x^2-t^2}}
\end{eqnarray}
}

「なお、ここでの目的は、関数の振る舞いを調べることなので、最後の計算において、指数関数にかかる係数はすべて省略していることに注意してください」