スーパーサイエンスガール

日々科学と格闘する理系高校生達の超絶難解な日常。

ラグランジアン密度とは

「一方、局所的な場の理論では、ラグランジアンLは、ラグランジアン密度の空間積分として書くことができます。ラグラジアンLと区別するため、ラグラジアン密度はLの花文字 \mathcal{L}で表されます。ラグランジアンLは、一般化座標 q(t)とその時間微分 \dot{q}(t)の関数で表されますが、ラグラジアン密度 \mathcal{L}は、1以上の場 \varphi(x)とその微分 \partial_\mu\varphiの関数として表されます。ここで、 \partial_\muは、4次元時空の微分 \partial_\mu=\frac{\partial}{\partial x^\mu}=\big(\frac{1}{c}\frac{\partial}{\partial t}, \nabla\big)を表します」

4次元時空の微分 \partial_\mu=\frac{\partial}{\partial x^\mu}=\big(\frac{1}{c}\frac{\partial}{\partial t}, \nabla\big)

ラグランジアンLとラグランジアン密度 \mathcal{L}って、どう違うのよ?」
 一宮が訊ねる。
ラグランジアンLは、運動エネルギーと位置エネルギーの差を一般化座標 q(t)とその時間微分 \dot{q}(t)の関数として表すものです。これは、粒子が存在するときに、その速度によって粒子の運動エネルギーが定まり、その位置によって粒子のポテンシャルエネルギーが定まるというイメージです」

ラグランジアン L(q, \dot{q})=(運動エネルギー)-(ポテンシャルエネルギー)
 ↓
粒子が存在するとき、その速度によって粒子の運動エネルギーが定まり、
その位置によって粒子のポテンシャルエネルギーが定まる

「一方、ラグランジアン密度 \mathcal{L}は、空間を満たす場 \varphi(x)とその微分 \partial_\mu\varphiの関数として表されます。以前にもお話したゲームの例でいえば、 \varphi(x) \partial_\mu\varphiは、空間の場 \varphi(x)は、ちょうどディスプレイの画面を構成するそれぞれのドットの色に相当し、その微分 \partial_\mu\varphiは、ドットの色の時間的な変化に相当します」

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ゲームとのアナロジー
空間の場 \varphi(x)→ディスプレイの画面を構成するそれぞれのドットの色に相当
その微分 \partial_\mu\varphi→ドットの色の時間的な変化に相当

「これは、空間を満たす場 \varphi(x)の存在自体によって位置エネルギーが生じ、また、空間を満たす場 \varphi(x)が時間的に変化して振動することによって、運動エネルギーが生じるというイメージです」

ラグランジアン密度 \mathcal{L}(\phi, \partial_\mu\phi)=(運動エネルギー)-(位置エネルギー
 ↓
空間を満たす場 \varphi(x)の存在自体によって位置エネルギーが生じ、
空間を満たす場 \varphi(x)が時間的に変化して振動することによって、運動エネルギーが生じる

ラグランジアンLとラグランジアン密度 \mathcal{L}の違いを一言でいえば、ラグランジアンLは、何もない空間中に粒子が運動するという、古典的なイメージに基づいた量であるのに対し、ラグランジアン密度 \mathcal{L}は、空間を満たす場が振動して粒子として振る舞うという、場のイメージに基づいた量なのです」

ラグランジアンL:何もない空間中に粒子が運動するという、古典的なイメージに基づいた量
ラグランジアン密度 \mathcal{L}:空間を満たす場が振動して粒子として振る舞うという、場のイメージに基づいた量

「それゆえ、ラグランジアン密度 \mathcal{L}は、別名、『場のラグランジアン』とも呼ばれるのです」