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スーパーサイエンスガール

日々科学と格闘する理系高校生達の超絶難解な日常。

共役運動量とは

ラグランジュ形式の場の理論についてお話した後は、ハミルトン形式の場の理論についてお話します。ラグランジュ形式の場の理論は、全ての式があらわにローレンツ不変であるため、特に相対論的力学に適していますが、このテキストでは、第1部を通してハミルトン形式の場の理論を用います。というのも、ハミルトン形式の場の理論によって、量子力学への移行が簡単になるからです。ここで、それぞれの力学的変数qの共役(きょうやく)運動量が p\equiv\partial L\backslash\partial\dot{q}(ここで、 \dot{q}=dq\backslash dt)で表されることを思い出してください」

「共役運動量? そんなの知らないわよ」
 一宮のぶっきらぼうな言葉に、越野さんは一瞬戸惑った。
「ちょっと共役運動量について、3分で分かりやすく説明してくれない?」
 一宮は乱暴に足を組みながら、ワンマン社長が平社員に説明を求めるような、思いっきり上から目線の口調で越野さんに命令した。
「そんな……3分だなんて……」
 越野さんはおろおろと一宮の顔を見返した。どうしてそこまで上から目線になれるんだ、お前は? ただの女子高生だろ?

 越野さんはしばらく考え込み、やがて説明を始めた。
ラグランジアンLは、(運動エネルギー)−(ポテンシャルエネルギー)という話は、以前しましたよね。例えば、3次元の直交座標の場合、ラグランジアンLは、次のように書くことができます」

{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
L&=&\frac{m}{2}(\dot{x}^2+\dot{y}^2+\dot{z}^2)-V(x, y, z)\\
&&(運動エネルギー)−(ポテンシャルエネルギー)\\
(\dot{x}&=&v_x, \dot{y}=v_y, \dot{z}=v_z)
\end{eqnarray}
}

「ここで、ラグランジアン L \dot{x}偏微分すると、 \frac{\partial{L}}{\partial\dot{x}}=m\dot{x}=mv_xとなって、x方向の運動量に等しいことがわかります。そこでこれを拡張し、一般化座標qについて、ラグランジアン L \dot{x}偏微分したものを運動量と定義することにします。このように定義された運動量を『一般化運動量』と呼びます」

一般化運動量
{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
p_i&=&\frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i}\,\,\,\bigg(\dot{q}_i=\frac{dq_i}{dt}\bigg)
\end{eqnarray}
}

「上の式を見てください。一般化運動量 p_iは、ラグランジアンLを介して一般化座標 q_iと対になった量と考えることもできます。そのため、一般化運動量は、『共役運動量(conjugate momentum)』とも呼ばれます」
「『共役』って何よ?」
「『共役』とは、一般に『互いに結びついた2つのもの」という意味があります」

共役:互いに結びついた2つのもの

「『共役』はもともとは、『共軛』と書いて、『軛(くびき)を共にして車を引く』という意味があります。これは、2頭立ての馬車や牛車などにおいて、2頭の馬や牛の後首に横木を結びつけて車を動かすことをいいます。この横木を『軛(くびき)』と言い、『共役』の『役』の本来の意味です」

2頭の牛の後首に取り付けられた軛(くびき)の一例
f:id:Dreistein:20150122054348j:plain
photo credit: bcmom via photopin cc

「ここで、ラグランジアンLを軛(くびき)と考え、一般化座標 q_iと一般化運動量 p_iを軛(くびき)に結びつけられた2頭の牛と考えると、共役のイメージがつかみやすいと思います」

一般化(共役)運動量
{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
p_i&=&\frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i}\,\,\,\bigg(\dot{q}_i=\frac{dq_i}{dt}\bigg)
\end{eqnarray}
}

ラグランジアンL→軛(くびき)
一般化座標 q_iと一般化運動量 p_i→軛(くびき)に結びつけられた2頭の牛

「つまり、ラグランジアンLを介して一般化座標と対応関係にある運動量だから、共役運動量と呼ぶわけね」
 一宮が満足そうに頷いたのを見て、越野さんはほっとしたような表情になった。