スーパーサイエンスガール

日々科学と格闘する理系高校生達の超絶難解な日常。

運動量密度とは

「一般化運動量 qは、ラグランジアンLを用いて、次のように定義されました」

一般化運動量(または共役運動量)
{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
p_i&=&\frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i}
\end{eqnarray}
}

「一方、場 \varphi(\bf{x})で表したとき、一般化運動量pは、ラグランジアン \mathcal{L}を用いて、次のように定義することができます」

{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
p(\bf{x})&\equiv&\frac{\partial L}{\partial \dot{\phi}(\bf{x})}
\end{eqnarray}
}

「これは、一般化座標 q_iが単に、場 \varphi(\bf{x})に置き換わっただけです。この式を計算してみると、次のようになります」

{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
p({\bf{x}})&\equiv&\frac{\partial L}{\partial \dot{\phi}({\bf{x}})}=\frac{\partial }{\partial \dot{\phi}({\bf{x}})}\int\mathcal{L}
(\phi({\bf{y}}), \dot{\phi}({\bf{y}}))d^3y\\
&\sim&\frac{\partial }{\partial \dot{\phi}(\bf{x})}\sum_{{\bf{y}}}\mathcal{L}(\phi({\bf{y}}), \dot{\phi}({\bf{y}}))d^3y\\
&=&\pi({\bf{x}})d^3x\\
\bigg(\pi({\bf{x}})&\equiv&\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \dot{\phi}({\bf{x}})}\bigg)
\end{eqnarray}
}
(2.4)

「1行目から2行目の変形では、変数yについての連続的な積分を、離散的な和で近似しています。ここで、(2.4)式の \pi({\bf{x}})=\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \dot{\phi}({\bf{x}})}は、 \varphi{(\bf{x})}に共役な運動量密度(momentum density)と呼ばれる量です」

 \varphi{(\bf{x})}に共役な運動量密度(momentum density)
{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\pi({\bf{x}})&\equiv&\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \dot{\phi}({\bf{x}})}
\end{eqnarray}
}

「なんで3行目から d^3y d^3xに変わっているのよ?」
 一宮が訊ねる。
「前にも説明したように、ラグランジアン密度 \mathcal{L}は、空間に満ちた場 \varphi(\bf{y})の関数であるため、空間全体に広がっています。そして空間全体に満ちた場のうち、一部の場 \varphi(\bf{x})が時間的に変動すると、その変動 \dot{\varphi}(\bf{x})が運動量 p(\bf{x})として観測されます」
「それと、 d^3yと何の関係があるのよ?」
「先ほどのゲーム画像の例でいえば、ディスプレイの画素が存在する範囲が、 d^3yの範囲となります。つまり、 yはディスプレイ全体の画素の位置を指定するものです。そして、それぞれの画素について和\Sigma_{\bf{y}}をとっています。一方、一部の画素の色情報が時間的に変化することにより、下図のように、エネルギー弾が連続的に運動しているように見えます」

f:id:Dreistein:20141206071943j:plain

「このエネルギー弾を構成する画素の位置が xに相当し、エネルギー弾の広がりの範囲が d^3xに相当するのです。上の(2.4)式の2行目から3行目への変形は、空間全体の広がりの範囲 d^3yに存在する場のうち、運動量に寄与する d^3xの範囲だけを取り出すことに相当します。これを数学的に表現すると、次のように、 \bf{x} \bf{y}が等しい場合に1となり、その他の場合は0となる、デルタ関数 \delta({\bf{x}}-{\bf{y}})を入力する操作に相当します」

{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\sum_{{\bf{y}}}\delta({\bf{x}}-{\bf{y}})\mathcal{L}(\phi({\bf{y}}), \dot{\phi}({\bf{y}}))d^3y
&=&\mathcal{L}(\phi({\bf{x}}), \dot{\phi}({\bf{x}}))d^3x\\
\end{eqnarray}
}

 ここで、テキストを眺めていた一宮が、突然何かに気づいたように顔をあげた。
「見てよ! このテキストをよく見ると、『momentum density』じゃなくて、『momerctum density』って書かれてるじゃないの!」

f:id:Dreistein:20150126053701p:plain

「それは……ただの誤植ではないでしょうか」
 越野さんは戸惑ったような顔をした。
「モマークタムよ、モマークタム!」
 まるで鬼の首をとったかのように、一宮が得意気になってはしゃいだ。

 子供のように嬉しそうにはしゃぎまわる一宮を見て、俺は思った。
 こいつは、どういうわけか、人の揚げ足取りになると、天才的に勘が働く。はたからみると、ある意味、エスパーじゃないかと思うほどだ。その能力をもっと有用なことに使えないのか、お前は……。