スーパーサイエンスガール

日々科学と格闘する理系高校生達の超絶難解な日常。

スカラー場とは

「結局、ハミルトニアンは、 p({\bf{x}})=\pi({\bf{x}})d^3xを使って、次のように書くことができます」


{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
H&=&\Sigma_{{\bf{x}}}p({\bf{x}})\dot{\phi({\bf{x}})}-L.
\end{eqnarray}
}

「この式を連続的に表現すると、次のようになります」


{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
H&=&\int d^3x[p({\bf{x}})\dot{\phi({\bf{x}})}-\mathcal{L}]\equiv\int d^3x\mathcal{H}.
\end{eqnarray}
}

(2.5)

「ここで、 \mathcal{H}は、ハミルトニアン密度と呼ばれます。なお、テキストによれば、このセクションの最後で、ハミルトニアン密度 \mathcal{H}の式を別の方法で再導出するそうです。ここで、簡単な例として、単一場 \varphi(x)の理論について考えてみます。単一場 \varphi(x)は、次のようなラグランジアン \mathcal{L}に従います」


{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\mathcal{L}&=&\frac{1}{2}\dot{\phi}^2-\frac{1}{2}(\nabla \phi)^2-\frac{1}{2}m^2\phi^2\\
&=&\frac{1}{2}(\partial_\mu\phi)^2-\frac{1}{2}m^2\phi^2.
\end{eqnarray}
}

(2.6)

「ちょっと、どうしていきなりそんな形が出てくるのよ?」
 一宮が訳が分からないといった顔をして訊ねた。
ラグランジアン Lは、(運動エネルギー)−(位置エネルギー)の形で表しますが、これは形式的に考えると、(微分の2次を含む項)−(微分を含まない逆符号の項)と考えることもできます。前者を運動項、後者をポテンシャル項と呼びます」

ラグランジアン \mathcal{L}の構造=運動項(微分の2次を含む項)−ポテンシャル項(微分を含まない逆符号の項)
{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\mathcal{L}&=&\frac{1}{2}(\partial_\mu\phi)^2-\frac{1}{2}m^2\phi^2.
\end{eqnarray}
}

「そして、運動項はさらに、(時間による微分の項)と(空間による微分の項)の2種類の項に分けられます」

運動項(微分の2次を含む項)=時間微分項+空間微分
{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\frac{1}{2}(\partial_\mu\phi)^2&=&\frac{1}{2}\dot{\phi}^2-\frac{1}{2}(\nabla \phi)^2.
\end{eqnarray}
}

「その結果、(2.6)式が導かれるのです。ここで、 \frac{1}{2}は単なる係数と考えてください。また、 m^2も係数ですが、このmは、質量と解釈されます。これについては、セクション2.3で扱うとのことです」

「それじゃ、どうしてポテンシャル項が場 \phiの1次の項じゃなくて、2次の項なのよ?」
「それは、場 \phi対称性を考えているからです。対称性を考えると、1次の場 \phiとしては、プラスの場 +\phiとマイナスの場 -\phiの両方が均等に現れます。だから、1次の項を考えると、これらプラスの場 +\phiとマイナスの場 -\phiが相殺して消えてしまいます。一方、2次の場 \phi^2の場合、マイナスの場 -\phiの2乗もプラスになるので、2次の項は相殺せずに残ります。実際には、2次の項だけでなく、4次、6次、8次……と偶数の項が全て残りますが、場 \phiが小さいものと仮定して、4次以降の項は、2次の項に対して無視できるものと近似して考えているのです」

「ねえ、さっきから思うんだけど、このテキストの著者って、ちょっと説明を省略しすぎじゃない? こんな説明で、読者がついて行けるとでも思っているのかしら?」
 一宮が憤慨した。
 それについては、俺も同感だな。とはいえ、量子力学相対性理論についてある程度の予備知識がないと、このテキストを最後まで読み通すのは困難だろう。もっとも、さすがの著者も、よもや一宮のような何の予備知識もないただの女子高生が、場の量子論のテキストをガチで読む時代が来るとは、まったく想定していなかったとは思うが……。

「ところで、場 \varphiは、『スカラー場(scalar field)』とも呼ばれます」
スカラー場?」
スカラー場とは、空間の各点に物理的な量が1つ1つ対応したような場です」

スカラー場:空間の各点に物理的な量が1つ1つ対応したような場

「先のゲームの例でいえば、ディスプレイの各画素に1つ1つの色の情報が対応することに相当します」

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