ネーターの定理とは
「このように、系に連続的な対称性が1つ存在するとき、それに対応する保存則が1つ存在します。これをネーターの定理(Noether's theorem)と呼びます」
ネーターの定理(Noether's theorem)
系に連続的な対称性が存在するとき、それに対応する保存則が存在する
「どうして系に連続的な対称性が存在すると、保存則が存在するのよ?」
一宮が腑に落ちない顔で訊ねた。
「以前お話したように、円をその中心のまわりに回転させても、円の形は全く変化せず、不変に保たれます。これは円が回転に対して『対称性』をもつためです」
円をその中心のまわりに回転させても、円の形は不変に保たれる(円対称性)
「これは見方を変えれば、円がその中心のまわりに回転していた場合、どのような方向(角度)から見ても、円の形が全く同じように見え、区別することができないということを意味します。このとき、回転による円の形の変化を私達は認識することができません。そして、回転による円の形の変化を認識することができないということは、回転に対する『円の見え方』が保存されていると考えることもできます」
円がその中心のまわりに回転していた場合、どのような方向(角度)から見ても、円の形が全く同じように見え、区別することができない
↓
回転による円の形の変化を認識することができない
(回転に対する『円の見え方」が保存されている)
「また、無限の長さの直線を直線の方向に平行移動させたとしても、直線の形は全く変化せず、不変に保たれます」
無限の長さの直線を直線の方向に平行移動させても、直線の形が不変に保たれる(対称性がある)
「これも見方を変えれば、無限の長さの直線が平行移動していた場合、どのような位置から見ても、直線の形が全く同じように見え、区別することができないということを意味します。このとき、平行移動による直線の形の変化を私達は認識することができません。そして、平行移動による直線の形の変化を認識することができないということは、平行移動に対する『直線の見え方』が保存されていると考えることもできます」
無限の長さの直線を直線の方向に平行移動させたとしても、直線の形が不変に保たれる
↓
平行移動による直線の形の変化を認識することができない
(『平行移動に対する直線の見え方』が保存されている)
「物体の運動についても同様の考え方が成り立ちます。すなわち、一様でどこにも特別な場所がない空間中を物体が運動していた場合、どの位置から見ても物体の運動が全く同じように見え、区別することができません。このとき、物体の運動の変化を私達は認識することができません。そして、物体の運動の変化を認識することができないということは、物体の『運動量が保存』されているということを意味するのです」
一様でどこにも特別な場所がない空間中を物体が運動していた場合、どの位置から見ても物体の運動が全く同じように見え、区別することができない
↓
物体の運動の変化を認識することができない(物体の運動量が保存される)
「また、等方的でどの方向も特別な方向がない空間中を物体が回転していた場合、どの方向(角度)から見ても物体の回転運動が全く同じように見え、区別することができません。このとき、物体の回転運動の変化を私達は認識することができません。そして、物体の回転運動の変化を認識することができないということは、物体の『角運動量が保存』されているということを意味するのです」
等方的でどの方向も特別な方向がない空間中を物体が回転していた場合、どの方向(角度)から見ても物体の回転運動が全く同じように見え、区別することができない
↓
物体の回転運動の変化を認識することができない(物体の角運動量が保存される)
「同様に、一様な時間中を波が振動していた場合、どの時点から見ても波の振動が全く同じように見え、区別することができません。ここで、波の振動数はエネルギーを表すことを考慮すると、波の振動によるエネルギーの変化を私達は認識することができないということを意味します。そして、波の振動によるエネルギーの変化を認識することができないということは、波の『エネルギーが保存』されているということを意味するのです」
一様な時間中を波が振動していた場合、どの時点から見ても波の振動が全く同じように見え、区別することができない
↓
波の振動によるエネルギーの変化を認識することができない(波のエネルギーが保存されている)
「このように、対称性によって物体の運動が全く同じように見え、区別することができないため、物体の運動の変化が認識できないとき、物体の『運動の保存則』として観測されるのです。これがネーターの定理の直観的なイメージです」
ネーターの定理の直観的なイメージ
対称性によって物体の運動が全く同じように見え、区別することができない
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物体の運動の変化が認識できず、物体の『運動の保存則』として観測される