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スーパーサイエンスガール

日々科学と格闘する理系高校生達の超絶難解な日常。

テイラー展開とは

「次に、変換 \varphi\rightarrow e^{i\alpha}\varphiのもとで複素スカラー場のラグランジアン \mathcal{L}が不変の場合を考えてみます」

{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\mathcal{L}=|\partial_\mu\phi|^2-m^2|\phi|^2=(\partial^\mu\phi)^\ast(\partial_\mu\phi)-m^2\phi^\ast\phi
\end{eqnarray}
}
(2.14)

「以前、場 \varphiの無限小の変換は次のような形に書けることをお話しました」

{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\phi(x)\rightarrow\phi^\prime(x)=\phi(x)+\alpha\Delta\phi(x)
\end{eqnarray}
}
(2.9)

「ここで、この(2.9)式と変換 \varphi\rightarrow e^{i\alpha}\varphiを比較すると、(2.9)式の右辺の第2項は次のようになります」

{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\alpha\Delta\phi&=&i\alpha\phi;\,\,\,\,\,\,\,\,\,\alpha\Delta\phi^*=-i\alpha\phi^*
\end{eqnarray}
}
(2.15)

「ちょっと待って! なんでそうなるのよ?」
 一宮が、訳が分からないといったように頭を振った。
「(2.9)式と変換 \varphi\rightarrow e^{i\alpha}\varphiって、全然形が違うじゃない! それなのに、なんで比較ができるのよ!」

「これはテイラー展開(Taylor expansion)を用いているためです」
テイラー展開?」
「ある区間 (\alpha, \beta)で無限回微分可能な関数f(x)は、その区間内の定点aの近傍のxにおいて、次のように展開でき、このような展開をテイラー展開(Taylor expansion)と呼びます」

テイラー展開(Taylor expansion)
{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
f(x)&=&\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(x-a)^n}{n!}f^{(n)}(a)\\
&=&f(a)+f^{(1)}(a)(x-a)+\frac{1}{2!}f^{(2)}(a)(x-a)^2+\cdots+\frac{1}{n!}f^{(n)}(a)(x-a)^n+\cdots
\end{eqnarray}
}

「ここで、 n!は、『nの階乗(factorial)』と呼ばれる記号であり、 n!=n\times (n-1)\times (n-2) \times \cdots \times 2\times 1のように、nから1までの積を表します。また、 f^{(n)}(a)は、 x=aにおける関数 fの『n次導関数』と呼ばれる記号であり、関数 fをn回微分して x=aを代入した値です」

 n!(nの階乗(factorial)):
 n!=n\times (n-1)\times (n-2) \times \cdots \times 2\times 1
(ただし、 0!=1と定める)

 f^{(n)}(a)(n次導関数):
関数 fをn回微分して x=aを代入した値
(ただし、 f^{(0)}(0)=1, x^0=1と定める)

「特に、 a=0のとき、テイラー展開は、マクローリン(Maclaurin expansion)展開と呼ばれ、次のように書くことができます」

マクローリン展開(Maclaurin expansion)
{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
f(x)&=&\sum_{n=0}^{\infty}\frac{x^n}{n!}f^{(n)}(0)\\
&=&f(0)+f^{(1)}(0)(x)+\frac{1}{2!}f^{(2)}(0)(x)^2+\cdots+\frac{1}{n!}f^{(n)}(0)(x)^n+\cdots
\end{eqnarray}
}

「でも、どうしてテイラー展開マクローリン展開なんてものを使うのよ?」
 一宮が首を傾げた。

「その理由を知るには、具体例を挙げるとわかりやすいです。ここで、 f(x)=e^{ix}という指数関数を実際にマクローリン展開してみます。 f^{(0)}(0)=1, 0!=1, x^0=1から、 e^{ix}マクローリン展開の第1項( n=0)は1となります。また、第2項( n=1)は \frac{f^{(1)}(0)}{1!}(ix)となり、第3項( n=2) \frac{f^{(2)}(0)}{2!}{(ix)}^2となります」

 f(x)=e^{ix}マクローリン展開
{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
e^{ix}&=&\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(ix)^n}{n!}{e^{x}}^{(n)}(0)\\
&=&1+\frac{f^{(1)}(0)}{1!}{ix}+\frac{f^{(2)}(0)}{2!}(ix)^2+\frac{f^{(3)}(0)}{3!}(ix)^3+\cdots+\frac{f^{(n)}(0)}{n!}(ix)^n\\
&=&1+\frac{ix}{1!}+\frac{(ix)^2}{2!}+\frac{(ix)^3}{3!}+\cdots+\frac{(ix)^n}{n!}
\end{eqnarray}
}

「このように、マクローリン展開を行うことにより、指数関数 f(x)=e^{ix}x^{(n)}の関数の和で表すことができます。ここで、上の式に x=\alphaを代入すると、 \alphaは無限小なので、2次以上の項の寄与はとても小さくなります。これは例えば、0.01を2乗すると0.0001となり、3乗すると0.000001となって、小さな数同士をかけ算すればするほど、どんどん小さくなることからも理解できると思います」

小さな数同士をかけ算すればするほど、どんどん小さくなっていく
0.01の2乗→0.0001
0.01の3乗→0.000001
0.01の4乗→0.00000001

「それゆえ、2次以上の項の寄与を無視すると、結局、 e^{i\alpha}\simeq1+i\alphaと近似することができます。このように、テイラー展開マクローリン展開は、近似計算に役立つのです」

テイラー展開マクローリン展開は、近似計算に役立つ

「実際、上で求めた近似式を用いると、 \varphi\rightarrow e^{i\alpha}\varphi\simeq(1+i\alpha)\varphi=\varphi+i\alpha\varphiとなるため、この式と(2.9)式と比較することによって、(2.15)式の関係を得ることができます。このように、数学や物理の世界では、テイラー展開マクローリン展開を用いた近似がよく行われるので覚えておいてください」