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スーパーサイエンスガール

日々科学と格闘する理系高校生達の超絶難解な日常。

第2量子化とは

「実クライン−ゴルドン場の古典論については、前節で簡単に(テキストによれば、あれで十分だそうですが)説明しました。関連する式は、(2.6), (2.7)および(2.8)です」


{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\mathcal{L}&=&\frac{1}{2}\dot{\phi}^2-\frac{1}{2}(\nabla \phi)^2-\frac{1}{2}m^2\phi^2\\
&=&\frac{1}{2}(\partial_\mu\phi)^2-\frac{1}{2}m^2\phi^2.
\end{eqnarray}
}

(2.6)

クライン−ゴルドン方程式
{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\bigg(\frac{\partial^2}{\partial t^2}-\nabla^2+m^2\bigg)\phi=0 \,\,\,\,\,\,\,\,\,  \textrm{or} \,\,\, \,\,\,\,\,\,  (\partial^\mu\partial_\mu+m^2)\phi=0
\end{eqnarray}
}
(2.7)

{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
H&=&\int d^3x\mathcal{H}=\int d^3x\bigg[\frac{1}{2}\pi^2+\frac{1}{2}(\nabla\phi)^2+\frac{1}{2}m^2\phi^2\bigg].
\end{eqnarray}
}
(2.8)

「ここで、古典的なクライン−ゴルドン方程式を量子化するため、場 \varphiと運動量密度 \pi演算子として取り扱い、適切な交換関係を課します。1以上の粒子の離散的な系では、交換関係は次のようになることを思い出してください」

{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
[q_i, p_j]&=&i\delta_{ij}\\
[q_i, q_j]=[&p_i,& p_j]=0.
\end{eqnarray}
}

「このような手続きを『第2量子化』と呼び、( \varphi演算子とする)クライン−ゴルドン方程式を( \varphiを古典場とする)クライン−ゴルドン方程式と区別します」
「第2量子化? さっきの量子化とどう違うのよ?」

「1粒子系のSchrodinger方程式は、巨視的(マクロ)な物理量を演算子に置き換えることにより、すでに量子化を行った式であることは、前回お話しました」

1粒子系のSchrodinger方程式
{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
i\hbar\frac{\partial\phi({\bf{r}}, t)}{\partial t}&=&\bigg(-\frac{\hbar^2}{2m}\Delta+U({\bf{r}})\bigg)\phi({\bf{r}},t)
\end{eqnarray}
}

「でも、Schrodinger方程式を導くに当たって、演算子に置き換えたのは、エネルギーや運動量のような物理量であって、波動関数 \phi({\bf{r}},t)そのものは、まだ演算子に置き換えていません。そこで、波動関数 \phi({\bf{r}},t)も、演算子 \hat{\phi}({\bf{r}},t)に置き換えてみることを考えてみます。このように、波動関数 \phi({\bf{r}},t)演算子 \hat{\phi}({\bf{r}},t)に置き換えることを、『第2量子化(second quantization)』と呼び、その結果、Schrodinger方程式はHeisenbergの運動方程式になります」

1粒子系のHeisenbergの運動方程式
{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
i\hbar\frac{\partial\hat{\phi}({\bf{r}}, t)}{\partial t}&=&\bigg(-\frac{\hbar^2}{2m}\Delta+U({\bf{r}})\bigg)\hat{\phi}({\bf{r}},t)
\end{eqnarray}
}

「ちょっと待って。上の2つの式って、どう違うのよ?  \phi \hat{}(ハット。帽子のような記号なので『ハット』と呼ぶ)が付いているかどうかの違いだけじゃない?」
 一宮が腑に落ちない様子で疑問を口にすると、越野さんは頭を大きく振った。

「一見、単なる記号の違いのように思えますが、物理的には大きな違いがあります。波動関数 \phi({\bf{r}},t)は、空間内を伝播する『波動』を表しますが、演算子 \hat{\phi}({\bf{r}},t)は、空間内に生成・消滅する『場の量子』を表しているのです」
「場の量子?」
「量子場の理論では、粒子や波動は、空間とは無関係に存在するのではなく、空間を一様に満たす場の一部が励起(振動)したものと考えます」

f:id:Dreistein:20141206071943j:plain

「上のゲームの例でいえば、機体やエネルギー弾が画面内を自由に飛んでいるように見えますが、実際には、画面を構成する1つ1つの画素に連続的に色情報が与えられることによって、機体やエネルギー弾が画面内を飛んでいるように見えるのです。古典的な場 \phi({\bf{r}}, t)が従うSchrodingar方程式は、前者のイメージに対応し、古典的な場 \phi({\bf{r}}, t)量子化したHeisenbergの運動方程式が、後者のイメージに対応するのです」

古典的な場 \phi({\bf{r}}, t):空間とは独立に、空間内を粒子や波動が運動するイメージ
 ↓ 第2量子化
量子化された場 \hat{\phi}({\bf{r}},t):空間を一様に満たす場の一部が励起(振動)して粒子や波動として認識されるイメージ

「ただし、ここで気をつけなくてはいけないのは、第2量子化は、巨視的な物理量や式を微視的な物理量や式に置き換えるという『量子化(Quantization)』の定義には該当しません。なぜなら、古典的な場 \phi({\bf{r}}, t)を扱うSchrodinger方程式は微視的な物理量を完全に記述可能な方程式であるため、巨視的な量から微視的な量に置き換える『量子化』そのものは、Shorodinger方程式を導いた時点ですでに行われているからです」

量子化と第2量子化の違い
(1) Newtonの運動方程式(巨視的な運動方程式
  ↓ 量子化(巨視的→微視的に置き換える)
(2) Schrodingerの波動方程式(微視的な運動方程式。微視的な運動を完全に記述可能)
  ↓ 第2量子化(微視的→微視的で変わらない。ゆえに厳密には『量子化』ではない)
(3) Heisenbergの運動方程式(古典的な場を量子化された場に置き換えたもの)

「だから『第2量子化』という言葉は、誤解に基づく言葉であり、厳密には不適切な言葉といえます。決して巨視的な量を微視的な量に2回変換しているわけではないので、この点を十分に注意してください」