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スーパーサイエンスガール

日々科学と格闘する理系高校生達の超絶難解な日常。

クライン−ゴルドン場のハミルトニアンの式変形の方針

 今まで武者さんの存在をすっかり忘れていた。俺は、彼女のステルス能力に再び戦慄した。
イージス艦の強力なレーダー網でも、彼女の存在を探知するのは困難に違いない。
「原点に戻るって、どういうことなの? 大和?」
 一宮が問いかけると、武者さんは、読みかけていたディラックの量子力學を閉じて立ち上がった。
「生成・消滅演算子 a_{\bf{p}}^\dagger, a_{\bf{p}} {\bf{p}}にマイナスの符号がついたそもそもの経緯は、(2.25)式および(2.26)式を、(2.27)式および(2.28)式に置き換えたことから始まる」


{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\phi({\bf{x}})&=&\int\frac{d^3p}{(2\pi)^3}\frac{1}{\sqrt{2\omega_{\bf{p}}}}\big(a_{\bf{p}}e^{i{\bf{p}\cdot\bf{x}}}+a_{\bf{p}}^{\dagger}e^{-i{\bf{p}\cdot\bf{x}}}\big);
\end{eqnarray}
}
(2.25)


{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\pi({\bf{x}})&=&\int\frac{d^3p}{(2\pi)^3}(-i)\sqrt{\frac{\omega_{\bf{p}}}{2}}\big(a_{\bf{p}}e^{i{\bf{p}\cdot\bf{x}}}-a_{\bf{p}}^{\dagger}e^{-i{\bf{p}\cdot\bf{x}}}\big).
\end{eqnarray}
}
(2.26)


{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\phi({\bf{x}})&=&\int\frac{d^3p}{(2\pi)^3}\frac{1}{\sqrt{2\omega_{\bf{p}}}}\big(a_{\bf{p}}+a_{-\bf{p}}^{\dagger}\big) e^{i{\bf{p}\cdot\bf{x}}};
\end{eqnarray}
}
(2.27)


{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\pi({\bf{x}})&=&\int\frac{d^3p}{(2\pi)^3}(-i)\sqrt{\frac{\omega_{\bf{p}}}{2}}\big(a_{\bf{p}}-a_{-\bf{p}}^{\dagger}\big)e^{i{\bf{p}\cdot\bf{x}}}.
\end{eqnarray}
}
(2.28)

「これらの式の大きな違いは、右辺の第2項の生成演算子 a_{\bf{p}}^\dagger {\bf{p}}の符号がプラスからマイナスに変わるとともに、その係数である指数関数 e^{i{\bf{p}\cdot\bf{x}}}の符号がマイナスからプラスに変わることにある。だから、下のクライン−ゴルドン場のハミルトニアンの式で、この逆変換をして、 {\bf{p}}の符号をマイナスからプラスに符号を戻してやればいい」


{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\mathcal{H}&=&\int d^3 x\int\frac{d^3p d^3p'}{(2\pi)^6}e^{i{({\bf{p}}+{\bf{p}'})\cdot\bf{x}}}\bigg\{-\frac{\sqrt{\omega_{\bf{p}}\omega_{\bf{p}'}}}{4}
\big(a_{\bf{p}}-a_{-\bf{p}}^{\dagger}\big)\big(a_{\bf{p}'}-a_{-\bf{p}'}^{\dagger}\big)\\
&+&\frac{-{\bf{p}}\cdot{\bf{p}}'+m^2}{4\sqrt{\omega_{\bf{p}}\omega_{\bf{p}'}}}
\big(a_{\bf{p}}+a_{-\bf{p}}^{\dagger}\big)\big(a_{\bf{p}'}+a_{-\bf{p}'}^{\dagger}\big)\bigg\}\\
&=&\int d^3 x\int\frac{d^3p d^3p'}{(2\pi)^6}e^{i{({\bf{p}}+{\bf{p}'})\cdot\bf{x}}}\bigg\{-\frac{\sqrt{\omega_{\bf{p}}\omega_{\bf{p}'}}}{4}
\big(a_{\bf{p}}a_{\bf{p}'}-a_{\bf{p}}a_{-\bf{p}'}^{\dagger}-a_{-\bf{p}}^{\dagger}a_{\bf{p}'}+a_{-\bf{p}}^{\dagger}a_{-\bf{p}'}^{\dagger}\big)\\
&+&\frac{-{\bf{p}}\cdot{\bf{p}}'+m^2}{4\sqrt{\omega_{\bf{p}}\omega_{\bf{p}'}}}
\big(a_{\bf{p}}a_{\bf{p}'}+a_{\bf{p}}a_{-\bf{p}'}^{\dagger}+a_{-\bf{p}}^{\dagger}a_{\bf{p}'}+a_{-\bf{p}}^{\dagger}a_{-\bf{p}'}^{\dagger}\big)\bigg\}.
\end{eqnarray}
}

「なるほど。その手があったか」
 彼女の方針は、まるでステルス攻撃機の誘導爆弾のように的確だった。この方針ならいけるかもしれない。
「さすがは大和、冴えるわね! 闇雲にゴリ押しで計算するどこかの誰かさんとは大違いね」
 一宮の褒め言葉兼悪口を聞いて、越野さんがうなだれた。
 こいつはこういうネチネチした、ナパーム爆弾でじわじわ焼き殺すような攻撃を好む。どこまで性根が腐った奴なんだ?