スーパーサイエンスガール

日々科学と格闘する理系高校生達の超絶難解な日常。

クライン‐ゴルドン場の交換関係の変形1

クライン‐ゴルドンプロパゲーター

「次に、クライン‐ゴルドン場の交換関係 [\phi(x), \phi(y)]についてもう少し調べてみることにします。この交換関係は c数(古典的な数(classical number)。普通の数と考えるといいです)であるため、 [\phi(x), \phi(y)]=\langle 0\mid [\phi(x), \phi(y)]\mid 0\rangleと書くことができます。なぜなら、 N c数とすると、 \langle 0\mid N\mid 0\rangle=N\langle0\mid0\rangle=Nとなるためです。この N [\phi(x), \phi(y)]と考えるといいです。それゆえ、 x^0>y^0と仮定したとき、この交換関係は、次の(2.54)式のように4次元の積分で書き換えることができます」


{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\langle 0\mid [\phi(x), \phi(y)]\mid 0\rangle&=&\int\frac{d^3p}{(2\pi)^3}\frac{1}{2E_{\bf{p}}}\big(e^{-ip\cdot (x-y)}-e^{ip\cdot (x-y)}\big)\\
&=&\int\frac{d^3p}{(2\pi)^3} \bigg\{\frac{1}{2E_{\bf{p}}}e^{-ip\cdot (x-y)}\bigg|_{p^0=E_{\bf{p}}}\\
&&\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,+\frac{1}{-2E_{\bf{p}}}e^{-ip\cdot (x-y)}\bigg|_{p^0=-E_{\bf{p}}}\bigg\}\\
&=&_{x^0>y^0}\int\frac{d^3p}{(2\pi)^3}\int\frac{dp^0}{2\pi i}\frac{-1}{p^2-m^2} e^{-ip\cdot (x-y)}.
\end{eqnarray}
}
(2.54)

「ちょっと、どうしてそんな変形ができるのよ? また、飛躍しているんじゃないの?」
 一宮が胡散臭そうな目で越野さんを見た。
「たしかに飛躍があるかもしれませんね。それなら行間をもう少し詳しく見てみましょうか。(2.54)式の最終行の分母に p^2-m^2とありますが、 p^2は4元運動量の内積であり、次のように定義されます」

4元運動量の内積
{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
p^2=(p^0)^2-(p^1)^2-(p^2)^2-(p^3)^2=(p^0)^2-{\bf{p}}^2
\end{eqnarray}
}

「ここで、 p^0は4元運動量の時間成分(1次元)を表します。また、 p^1, p^2, p^3は4元運動量の空間成分(3次元)を表し、 {\bf{p}}=(p^1, p^2, p^3)となります」

 p^0:4元運動量の時間成分(1次元)
 {\bf{p}}=(p^1, p^2, p^3):4元運動量の空間成分(3次元)

「この4元運動量の内積の定義と、Einsteinの関係式 E_{\bf{p}}^2={\bf{p}}^2+m^2を用いると、分母の p^2-m^2は、次のように変形することができます」


{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
p^2-m^2&=&\big((p^0)^2-{\bf{p}}^2\big)-m^2\\
&=& (p^0)^2-({\bf{p}}^2+m^2)\\
&=&(p^0)^2- E_{\bf{p}}^2\\
&=&(p^0+ E_{\bf{p}}) (p^0- E_{\bf{p}})
\end{eqnarray}
}

「それゆえ、 p^0= \pm E_{\bf{p}}に極があることが分かります。これを(2.54)式の最終行の式に代入すると、次のようになります」


{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
&&_{x^0>y^0}\int\frac{d^3p}{(2\pi)^3}\int\frac{dp^0}{2\pi i}\frac{-1}{p^2-m^2} e^{-ip\cdot (x-y)}\\
&=&_{x^0>y^0}\int\frac{d^3p}{(2\pi)^3}\int\frac{dp^0}{2\pi i}\frac{-1}{(p^0+ E_{\bf{p}}) (p^0- E_{\bf{p}})} e^{-ip\cdot (x-y)}
\end{eqnarray}
}