2014-12-01から1ヶ月間の記事一覧
相対論的な粒子の確率振幅U(t) 「上の式において、は、第2種変形ベッセル関数と呼ばれる」 「第2種変形ベッセル関数?」 一宮の質問に答える代わりに、武者さんは黙ってMacBook Airのキーを叩き、ターミナルを起動させた。 「何をやってるのよ?」 「いま…
「『岩波 数学公式』にも載っていないような公式が載っているなんてすごい本ね」 「欧米の積分表の歴史を考えれば、日本が勝てるわけがない」 「そんなに歴史があるの?」 武者さんは頷いた。 「欧米の積分表のルーツは、1810年にドイツの数学者マイヤー・ヒ…
相対論的な粒子の確率振幅U(t) 「上式では、運動量pについての積分が残されていますが、このテキストによれば、これはベッセル(Bessel)関数の観点から明確に評価できるとのことです」 「ベッセル関数って何よ?」 一宮の質問に、越野さんは少し表情を曇ら…
「次は、相対論的な粒子の確率振幅について考えてみます。相対論的な粒子のエネルギーは、アインシュタインの関係式からの形にかけるので、この値をハミルトニアンに代入すると、次のようになります」 「ここで、1行目から2行目の式変形には、積分による完…
「積分による完備関係式、を用いると、ケットベクトルは、次のように、運動量空間の正規直交系で展開できます」 「展開の結果、という式があらわれますが、これはx-表示からp-表示への変換関数と呼ばれます」 :x-表示からp-表示への変換関数 「ここで、の物…
「コーシー列による完備の定義についてはよく分かった。だが、俺にはこのコーシー列による完備の定義と正規直交系の展開は、どこにも接点がないというか、ぜんぜん別物のように思えるんだが?」 俺の疑問: コーシー列による完備の定義と正規直交系の展開は…
「完備関係式については、よくわかったわ。でも、そもそもどうして『完備』なんて、意味不明の言葉を使うのよ?」 一宮が不満そうに言った。 「『完備』という言葉はたしかに分かりにくいですね。こういうときは、英語で考えると理解できることが多いです。…
「ここで、非相対論的な自由粒子を例に、この振幅の具体的な値を実際に計算してみましょう。非相対論において、質量、運動量の自由粒子の運動エネルギーは、とかけるため、この式をハミルトニアン(ハミルトニアンは、一般化座標であらわしたエネルギー)に…
「それでは、今度こそ、本当に第2章に入ります」 越野さんは、一宮がまた変な質問をするのではないかと、ビクビクしながらときどき一宮の様子をうかがっていた。 だが、一宮はさっきの敗北に懲り懲りしたのか、椅子に座って大人しくしていた。シャープペン…
一宮が突きつけた難問に悩み苦しむ俺に、救いの手を差し伸べてくれたのは、やはり越野さんだった。 「あの、すみません。その問題の答えは、テキストに書いてありました」 「なんだって?」 俺と一宮は、越野さんのほうを一斉に見た。 「この問題は、ハイゼ…
「量子力学と場の量子論の違いが分かったところで、第2章の本題に入りましょうか」 「ちょっと待って!」 一宮が再び手を上げた。 「なんでしょうか。一宮さん」 一宮は目を輝かせながら微笑していた。 「いま、私の頭に素晴らしいアイデアが浮かんだわ。み…
「場は、時空間を満たすっていうけど、それってオカルトでいうところの『気』とか『エーテル』じゃないの?」 突然、一宮が突拍子もないことを言い出した。 気:中国哲学や東洋医学において、万物を構成する要素であり、生命力の源と考えられていた。 エーテ…
「量子力学は、ミクロの世界の対象を扱う力学というのは、よく分かったわ。それじゃ、場の量子論って何よ?」 一宮が再び質問する。 「場の量子論では、電場や磁場のように、目には見えませんが、時空間を満たす『場』という存在を考えます」 「場?」 「さ…
「それでは第2章を始めます」 第2章の輪講は、適当なところまで越野さんが担当することになった。 「ふつつか者ですが、よろしくお願いいたします」 お辞儀した瞬間、越野さんの豊満な胸の谷間が垣間見えた。少なくともEカップはあるだろうか。女子高生の…
「最後に、高次の摂動項の散乱断面積の計算を行う。ファインマンのおかげで、この図を描くことは少なくとも容易になった。図1.4は、の散乱断面積において、微細構造定数の3乗の項()に寄与するファインマン図を示す」図1.4 「ここで注目すべきなのは、ファ…
「また、異なる基準座標系を用いた計算も容易になる。例えば、振幅と散乱断面積との間の関係を示す(1.1)式の修正のみで事足りる。 散乱の微分断面積: 「あるいは、重心系の計算により得られた結果に、単純にローレンツ変換を行うこともできる。始状態および…
「ファインマン則とファインマン・トレース技術は、とてもパワフルなので、単純化の仮定をいくつか緩めることもできる。例えば、電子の質量が無視できるという仮定がある。なぜなら、電子はミュー粒子より200倍も軽いため、ビームエネルギーがミュー粒子を作…
「ここで、(1.10)式のような式を扱うため、特に非偏極断面積(unpolarized cross section)のみを計算したいときに、多くの有用な技術を用いることができる。この技術は、ガンマ行列の積のトレースを評価しなければならないことから、『ファインマン・トレー…
「外線の4成分の列スピノルまたは行スピノルは、それぞれ始状態および終状態の運動量空間の波動関数で、およびに相当する」図1.5 「添字およびは、上向きスピンまたは下向きスピンのスピン状態をあらわす。ここで、上の図1.5のファインマン図の要素から直接…