スーパーサイエンスガール

日々科学と格闘する理系高校生達の超絶難解な日常。

立体角とは

図1.1
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超絶難解な問題1:以下の式を導け。ただし、 d\sigma微分断面積、 d\Omega:立体角とする。

{ \displaystyle
\frac{d\sigma}{d\Omega}=\frac{1}{64\pi^2E_{\rm cm}^2}\cdot|M|^2
}

「誰かと思ったら、大和(やまと)じゃない?」
 一宮に話しかけられて、武者さんは顔を上げて一宮をじっと見つめた。大和とは、武者さんのファーストネームだ。
「ちょうどいいわ!」
 一宮の顔がぱっと輝いた。

「ねえ、大和。今日って、なんかさ、こう……立体カクカクな気分じゃない?」
 武者さんは、一宮の意図を把握しそこねたのか、首を小さく傾けた。立体カクカクな気分って、一体どんな気分なんだよ?
「だから、なんか立体っぽくって、カクカクした話がしたくない? たとえば『立体角』っぽい話とか」
 なんというか、素直に、『立体角について教えてください。武者様!』と頼めないところが、こいつの性格の難点だ。

 だが、武者さんは、一宮の意図がようやく理解できたのか、読んでいた頁にしおりをはさんで本を閉じた。本のタイトルは、P・A・M・ディラックの『量子力学』だった。

 武者さんは、無言で立ち上がると、ホワイトボードのそばまで歩いてきた。そして、マーカーを手に取るとホワイトボードに説明を書き込みはじめた。
「順序からいえば、平面角を学んでから立体角について学ぶのが理解もしやすく、かつ効率的」
 ホワイトボードに向かって、武者さんが独り言のように呟く。

「平面角の場合、頂点Oから伸びる半直線OAとOBによって区切られた扇形の角度θは、半直線OAとOBの開き具合、すなわち、円弧ABの長さで定めることができる。 つまり、円弧ABの長さが長ければ長いほど、平面角θも大きくなる。だから、この円弧ABの長さで角度を定めようというのが、平面角の考え方」

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「ここで、円の半径rを1としたとき、その円周の長さは 2\piで表される。それゆえ、最大の平面角は 2\piラジアン)で表される」
「つまり、円弧の長さで扇形の角度を定めようってわけね」
 一宮の言葉に、武者は無言で頷いた。

平面角の考え方
円弧ABの長さが長ければ長いほど、平面角θも大きくなる
 ↓
円弧ABの長さ(0 ~ 2π)で角度を定める

「立体角の考え方も、平面角の考え方と基本は同じ」
 そう言って、武者さんは平面角の説明の右側に立体角の説明を書き込み始めた。

「立体角の場合、頂点Oから放射状に伸びる無数の半直線によって区切られた錐体(すいたい)の立体角 d\Omegaは、錐体の広がり具合、すなわち半直線と球との交点で区切られた面領域dSの面積で定めることができる。つまり、面領域dSの面積が大きければ大きいほど、立体角 d\Omegaも大きくなる。だから、この面領域dSの面積の大きさで角度を定めようというのが、立体角の考え方」

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「ここで、球の半径rを1としたとき、その球面の面積は 4\piで表される。それゆえ、最大の立体角は 4\pi(ステララジアン)で表される」

立体角の考え方
面領域dSの面積が大きければ大きいほど、立体角 d\Omegaも大きくなる
 ↓
面領域dSの面積の大きさ(0 ~ 4π)で角度を定める

「要するに、立体角って、平面角の立体版みたいなものなのね!」
 一宮は、ようやく理解できたように満足そうに頷いた。武者は、一宮に軽く一礼すると、元いた場所に向かい、ディラック量子力学を手にとるや否や、再び黙々と読書を始めた。

 一宮は、俺のほうにドヤ顔を向けて、優越感に浸りながら下等生物を見るような目つきで思い切り見下すように言った。
「つまり、これが立体角! わかった?」

お前は何もやってねーだろっ!!