スーパーサイエンスガール

日々科学と格闘する理系高校生達の超絶難解な日常。

全微分とは

ラグランジアン密度 \mathcal{L}の作用積分Sは、次のように書くことができます」

{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
S&=&\int L dt=\int \mathcal{L}(\phi, \partial_\mu\phi)d^4x 
\end{eqnarray}
} (2.1)

「このテキストの主題は、場の理論なので、以下、 \mathcal{L}を単に、ラグランジアンと呼ぶことにします。前回お話したように、最小作用の原理は、時間 t_1 t_2の間で、始点Oから終点Pに系が発展するとき、Sが極値(通常、極小値)となるような『経路』だけが残って発展していくという原理です。この条件を式で表すと、次のようになります」

{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
0&=&\delta S\\
&=&\int d^4x\bigg\{\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial\phi}\delta\phi+\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_\mu\phi)}\delta(\partial_\mu\phi)\bigg\}
\end{eqnarray}
}
(2.2)

「(2.2)式は、ラグランジアン \mathcal{L}の変数\phi \partial_\mu\phiを、それぞれ微小量\delta \phi \delta(\partial_\mu\phi)だけ変化させても、作用積分Sの変動がゼロ、すなわちSが極値にある条件を示しています。(2.2)式の右辺の中括弧内の式の意味は、次のようになります」

(2.2)式の右辺の中括弧内の式の意味
\phiの変化量に対する\mathcal{L}の変化量の割合)×( \phiの微小変化量)+(\partial_{\mu}\phiの変化量に対する\mathcal{L}の変化量の割合)×( \partial_{\mu}\phiの微小変化量)

「(2.2)式の右辺の中括弧内の式は、ラグランジアン \mathcal{L}の変数\phi \partial_\mu\phiについて、それぞれ微小量\delta \phi \delta(\partial_\mu\phi)だけ変化させたときの \mathcal{L}の微小変化量 \delta\mathcal{L}を表しています。このように、ある関数の変数を微小量だけ変化させたとき、それぞれの変数に対する関数の変化量の和で表される関係式を、その関数の『全微分』と呼びます。例えば、変数が x, y, zのとき、関数fの全微分は次のように表されます」

{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
df=\frac{\partial f}{\partial x}dx+\frac{\partial f}{\partial y}dy+\frac{\partial f}{\partial z}dz
\end{eqnarray}
}

微分:ある関数 fの各変数( x, y, zなど)を微小量( dx, dy, dzなど)だけ変化させたとき、それぞれの変数に対する関数の変化量の和で表される関係式

「ここで、 \frac{\partial f}{\partial x}dxは、変数 xを微小量 dxだけ変化させたときの fの微小な変化量を表し、その他の変数 y, zについても同様です。全微分の関係は、場の量子論の変分の計算によく出てくるので、その物理的な意味をよく覚えておいてください」