表面項とは
「下のような変換によっても運動方程式が不変に保たれるとき、このような変換を『対称性』と呼ぶことをお話しました」
「ところで、運動方程式は、最小作用の原理によって作用から導き出すことができます。そのため、作用が不変になる(2.9)式のような変換があれば、その変換に対しては運動方程式も不変になることがわかります」
運動方程式は最小作用の原理により作用から導き出すことができる
↓
作用が不変になる(2.9)式のような変換があれば、その変換に対しては運動方程式も不変になる
「そこで、運動方程式ではなく、作用が不変になるような変換を見つけることを考えてみます。このような変換としては、一般的に、表面項(surface term)の変換があります」
「表面項?」
一宮が首を傾げた。
「以前、オイラー・ラグランジュ方程式(2.3)を導き出すときに、下の第3項がガウスの発散定理を用いて、表面積分に変形できるという話をしたと思います」
(2.2)
「この表面積分という言葉から、このテキストでは、この第3項を『表面項(surface term)』と呼んでいるみたいです」
「ちょっといくらなんでも、はしょりすぎじゃないの! 大体、超能力者でもないのに、そんなこと分かるわけないでしょ!」
一宮は顔を真っ赤にして怒った。
「こんなにはしょりすぎたら、著者の奥さんでも分からないわよ!」
いや、著者の奥さんは全然関係ないだろ。
「この表面項ですが、以前もお話したように、表面において値がゼロになってしまうため、オイラー・ラグランジュ方程式(2.3)の導出には全く影響ありませんでした」
「これは逆に考えると、表面項を自由に変換しても、運動方程式であるオイラー・ラグランジュ方程式は不変に保たれるということを意味します」
表面項
はオイラー・ラグランジュ方程式の導出に全く影響しない
↓
表面項を自由に変換しても、オイラー・ラグランジュ方程式は不変に保たれる
「そこで、作用が不変に保たれるような変換として、この表面項の変換に着目するというわけです。以上が大まかな方針です」