スーパーサイエンスガール

日々科学と格闘する理系高校生達の超絶難解な日常。

エネルギー・運動量テンソルとは

{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
 T^\mu_{\,\,\,\nu}&\equiv&\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial(\partial_\mu\phi)}\partial_\nu\phi-\mathcal{L}\delta^\mu_\nu.
\end{eqnarray}
}
(2.17)

 T^\mu_\nuは、場 \varphiのエネルギー・運動量テンソル(stress-energy tensor、energy-momentum tensor)と呼ばれ、エネルギー・運動量の流れや密度を表すテンソルです」

エネルギー・運動量テンソル(stress-energy tensor、energy-momentum tensor):
エネルギー・運動量の流れや密度を表すテンソル

「添字 \mu, \nuは、0から3までの値をとり、これは (ct, x, y, z)=(x^0, x^1, x^2, x^3)の成分番号に対応します。このとき、添字 \mu, \nuの成分番号に応じて、物理的な意味が下のように異なります」


 T^{00}:エネルギー密度
 T^{0j}:エネルギー流束の第 j成分( j=1, 2, 3
 T^{i0}:運動量の第 i成分の密度( i=1, 2, 3
 T^{ij}:運動量の第 i成分の流束の第 j成分

「『エネルギー流束』ってなによ?」
 一宮が訊ねる。
「『エネルギー流束』というのは、その名の通り、エネルギーの流れの束を表します。エネルギー流束の第 j成分というのは、ある点において第 j軸に垂直に立てた単位面積を通って第 j軸の正の向きに流れるエネルギーの量をいいます」

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「また、『運動量の流束』といったときも同様に、運動量の流れの束を表します」

エネルギーの流束:ある点において第 j軸に垂直に立てた単位面積を通って第 j軸の正の向きに流れるエネルギーの量
運動量の流束:ある点において第 j軸に垂直に立てた単位面積を通って第 j軸の正の向きに流れる運動量の量

「ここでのエネルギーや運動量は、時空間を満たす場 \varphiの変動によって生じたものです。ゲームの例でいえば、ディスプレイの画素の色情報が変化して、あたかもエネルギー弾の流れが生じたり、機体の運動が生じたりするように、時空間を満たす場 \varphiが変動することによって、エネルギーや運動量の流れが生じるのです」

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「そして、このような場 \varphiの変動によって生じたエネルギーや運動量が重力源となって、時空の歪みを生じさせるという式が一般相対性理論におけるアインシュタイン方程式です」

アインシュタイン方程式
{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
R_{\mu\nu}-\frac{1}{2}g_{\mu\nu}R+\Lambda g_{\mu\nu}=-\frac{8\pi G}{c^4}T_{\mu\nu}.
\end{eqnarray}
}

アインシュタイン方程式において、右辺にエネルギー・運動量テンソル T_{\mu\nu}があることが分かります。ところで、このエネルギー・運動量テンソル T^{\mu\nu}を用いると、エネルギーの保存則と運動量の保存則は、次のように表すことができます」

エネルギー・運動量の保存則
{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\frac{\partial}{\partial t}T^{\mu 0}+\Sigma_{j=1}^3\frac{\partial}{\partial x_j}T^{\mu j}=0.
\end{eqnarray}
}

「上式の第1項は、エネルギー・運動量の流束の時間的な変化を、第2項は、エネルギー・運動量の流束の時間的な変化を表します。そして、 \mu=0ならエネルギーの保存を、 \mu=1, 2, 3なら運動量の第 \mu成分の保存を表します。このように、エネルギー・運動量テンソル T_{\mu\nu}がを用いると、1つの式でエネルギーと運動量の両方を表すことができるのです」