量子化とは
「2.3節では、最も簡単な場である実クライン−ゴルドン場のかなり形式的な扱いで量子場の理論の説明を始めたいと思います。考え方としては、古典場の理論(ラグランジアン(2.6)に支配される古典的なスカラー場の理論)で始めて、次にそれを『量子化』して、力学変数を正準交換関係に従う演算子として再解釈します。それから、調和振動子との類似性を用いて、ハミルトニアンの固有値と固有状態を見つけることによって、理論を『解く』ことにします」
「さっきからなに言ってるのか、さっぱりよね。木花ちゃん、ちゃんと日本語話してる?」
一宮の言葉によほどショックを受けたのか、越野さんは固まってしまった。
「これだから理系人間って、わけが分からないのよ。そもそも、量子化って何よ?」
「『量子化』というのは、一言でいえば、巨視的(マクロ)な物理現象に対して成り立つ古典的な物理量や方程式を、微視的(ミクロ)な物理現象に対して成り立つ量子論的な物理量や方程式で置き換えることをいいます」
量子化:巨視的(マクロ)な物理現象に対して成り立つ古典的な物理量や方程式を、微視的(ミクロ)な物理現象に対して成り立つ量子論的な物理量や方程式で置き換えること
「つまり、マクロな量をミクロな量に置き換えることを『量子化』っていうの?」
「ひと言でいえばそうなりますね。例えば、ポテンシャルの作用のもとにある質量mの粒子のエネルギーEは、古典的には、運動量
を用いて、次のように書くことができます」
「これは、マクロなスケールで成り立つ関係式です。ここで、この関係式をミクロなスケールでも成り立つ量に置き換えてみます。量子化の手続きは簡単で、上式の両辺に右辺からをかけて、エネルギーEと運動量
を次のように置き換えるだけです」
「その結果、次の式が得られます」
「これは微視的な物理現象に対して成り立つの波動方程式に他なりません」
「ここで、は、演算子への置き換えに対応します」
「演算子?」
「『演算子』というのは、ざっくりいえば、ある関数に作用して別の関数に対応させるものと考えるといいです」
演算子:ある関数に作用して別の関数に対応させるもの
「例えば、という演算子は、関数
に作用して、別の関数
に対応させます。量子場の理論の場合、演算子というのは、巨視的(マクロ)な物理量や式に作用して、微視的(ミクロ)な物理量や式に対応させるものと考えるといいです」