スーパーサイエンスガール

日々科学と格闘する理系高校生達の超絶難解な日常。

自由度とは

「前回、正準交換関係は下のようになることを以前お話しました。ここでは、自然単位系を用いているので、プランク定数 \hbar=1となっていることに注意してください」

{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
[q_i, p_j]&=&i\delta_{ij}\\
[q_i, q_j]=[&p_i,& p_j]=0.
\end{eqnarray}
}

「この式では、クロネッカーのデルタ \delta_{ij}が用いられていますが、これは i, jが同一( i=jの場合)にのみ \delta_{ij}=1となって、位置と運動量の不確定性関係(Heisenbergの不確定性関係)が成り立つことを意味しています( i\neq jの場合は、 \delta_{ij}=0)」
 i, jって何よ?」
 一宮がホワイトボードを指さした。
 i, jは自由度を表します」
「自由度?」
「自由度とは、力学系において、独立に変化しうる座標の数をいいます」

自由度とは、力学系において、独立に変化しうる座標の数

「例えば、 i=1, 2, 3は、それぞれ1番目の粒子の x, y, z座標を表し、 i=4, 5, 6は、それぞれ2番目の粒子の x, y, z座標を表す、といったように座標を割り振ることができます。また、考えている系が1次元系の場合は、 i=1, 2, 3は、それぞれ1,2,3番目の粒子の x座標を表す、というように座標を割り振ります」

考えている系によって、自由度 i, jは異なる
(1)  i=1, 2, 3→1番目の粒子の x, y, z座標、 i=4, 5, 6→2番目の粒子の x, y, z座標
(2) 1次元系の場合: i=1, 2, 3→1,2,3番目の粒子の x座標など

「ここで、 i, jが同一( i=jの場合)にのみ、 \delta_{ij}=1となるということは、同一の粒子の同一座標(x座標など)についてのみ、位置と運動量の不確定性関係(Heisenbergの不確定性関係)が成り立ち、異なる粒子、あるいは、同一の粒子であっても異なる座標については、Heisenbergの不確定性関係は成り立たないということを意味しています」

同一の粒子の同一座標(x座標など)についてのみ、位置と運動量の不確定性関係(Heisenbergの不確定性関係)が成り立つ

「ところで、量子場の理論では、連続的な場 \varphi(x)を考えるので、離散的なクロネッカーのデルタ \delta_{ij}の代わりに、連続的なデルタ関数 \delta^{(3)}({\bf{x}}-{\bf{y}})を用いて正準交換関係を書き換えます」

クロネッカーのデルタ \delta_{ij}(離散的)
 i=jのとき、 \delta_{ij}=1 i\neq jのとき、 \delta_{ij}=0
 ↓
デルタ関数 \delta^{(3)}({\bf{x}}-{\bf{y}})(連続的)
\bf{x}=\bf{y}のとき、 \delta^{(3)}({\bf{x}}-{\bf{y}})=1\bf{x}\neq\bf{y}のとき、 \delta^{(3)}({\bf{x}}-{\bf{y}})=0

「ここで、 {\bf{x}}, {\bf{y}}は、例えば、 {\bf{x}}=(x_1, y_1, z_1), {\bf{y}}=(x_2, y_2, z_2)などの座標を表します。デルタ関数 \delta^{(3)}({\bf{x}}-{\bf{y}})を用いると、連続的な正準交換関係は次のようになります」

{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
[\phi({\bf{x}}), \pi({\bf{y}})]&=&i\delta^{(3)}({\bf{x}}-{\bf{y}});\\
[\phi({\bf{x}}), \phi({\bf{y}})]&=&[\pi({\bf{x}}), \pi({\bf{y}})]=0.
\end{eqnarray}
}
(2.20)

「ここで、 \piは運動量密度であり、運動量 pに相当する量です」