Schrodinger描像とは
(2.20)
「ここで、当面の間は、場と運動量密度が時間に依存するSchrodinger描像に従うものとします。次の節では、Heisenberg描像に切り替えたとき、両方の演算子が同時刻という条件で、これら『同時刻』交換関係が成り立ちます。また、場と運動量密度の関数であるハミルトニアンもまた演算子となります」
「Schorodinger描像とか、Heisenberg描像ってなによ?」
一宮が疑問を口にした。
「Schorodinger描像とか、Heisenberg描像は、運動の記述法を表します」
「運動の記述法?」
「最初にSchorodinger描像ですが、これはSchorodinger方程式に由来します。Schorodinger方程式は、Diracの記法で表わすと、次のように書くことができます」
「ここで、巨視的(マクロ)な物理量に対応する演算子をとすると、時刻tにおけるその期待値は、次のように書くことができます」
「ちょっと待って。どうして期待値が出てくるよ?」
一宮が首を傾げた。
「波動関数は確率的に分布しているので、確定した値を知ることはできません。だから、物理量を知るには、期待値を計算しかないのです。具体的には、上式のように波動関数を表す状態ベクトルで、巨視的(マクロ)な物理量を表す演算子を両側からはさんで平均値をとります。この場合、巨視的な物理量に対応する演算子を自身は時間に依存せず、波動関数を表す状態ベクトルが時間とともに変化するため、結果として期待値も時間ととも変化します。このように、物理量を表わす演算子を固定して、系の状態が時間とともに変化するという運動の記述法をSchrodinger描像(Schrodinger picture)と呼びます」
Schrodinger描像(Schorodinger picture):
系の状態が時間発展し、物理量を表わす演算子は時間に依存しない形式
「古典的なNewtonの運動方程式では、時間とともに巨視的(マクロ)な物理量である運動量が変化しますが、Schrodinger描像では、運動量に対応する演算子はまったく変化せず、状態を表す波動関数が変化した結果、その期待値が変化するのです」
古典的なNewtonの運動方程式とのイメージの違い
古典的なNewtonの運動方程式:時間とともに巨視的(マクロ)な物理量である運動量が変化する
Schrodinger描像:運動量に対応する演算子はまったく変化せず、状態を表す波動関数が変化した結果、その期待値が変化する
「このイメージは直観的に分かりにくいかもしれませんね」