スーパーサイエンスガール

日々科学と格闘する理系高校生達の超絶難解な日常。

Schrodinger描像とは

{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
[\phi({\bf{x}}), \pi({\bf{y}})]&=&i\delta^{(3)}({\bf{x}}-{\bf{y}});\\
[\phi({\bf{x}}), \phi({\bf{y}})]&=&[\pi({\bf{x}}), \pi({\bf{y}})]=0.
\end{eqnarray}
}
(2.20)

「ここで、当面の間は、場 \phiと運動量密度 \piが時間に依存するSchrodinger描像に従うものとします。次の節では、Heisenberg描像に切り替えたとき、両方の演算子が同時刻という条件で、これら『同時刻』交換関係が成り立ちます。また、場 \phiと運動量密度 \piの関数であるハミルトニアンもまた演算子となります」
「Schorodinger描像とか、Heisenberg描像ってなによ?」
 一宮が疑問を口にした。

「Schorodinger描像とか、Heisenberg描像は、運動の記述法を表します」
「運動の記述法?」
「最初にSchorodinger描像ですが、これはSchorodinger方程式に由来します。Schorodinger方程式は、Diracの記法で表わすと、次のように書くことができます」

{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\mid \varphi(t)\rangle&=&\hat{H}\mid\varphi(t)\rangle
\end{eqnarray}
}

「ここで、巨視的(マクロ)な物理量 Oに対応する演算子 \hat{O}_Sとすると、時刻tにおけるその期待値 \bar{O}(t)は、次のように書くことができます」

{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\bar{O}(t)&=&_S\langle\varphi(t)\mid\hat{O}_S\mid\varphi(t)\rangle_S
\end{eqnarray}
}

「ちょっと待って。どうして期待値が出てくるよ?」
 一宮が首を傾げた。
波動関数 \varphi(t)は確率的に分布しているので、確定した値を知ることはできません。だから、物理量を知るには、期待値を計算しかないのです。具体的には、上式のように波動関数を表す状態ベクトルで、巨視的(マクロ)な物理量を表す演算子を両側からはさんで平均値をとります。この場合、巨視的な物理量 Oに対応する演算子 \hat{O}_S自身は時間に依存せず、波動関数を表す状態ベクトル \varphi(t)\rangleが時間とともに変化するため、結果として期待値 \bar{O}(t)も時間ととも変化します。このように、物理量を表わす演算子を固定して、系の状態が時間とともに変化するという運動の記述法をSchrodinger描像(Schrodinger picture)と呼びます」

Schrodinger描像(Schorodinger picture):
系の状態が時間発展し、物理量を表わす演算子は時間に依存しない形式

「古典的なNewtonの運動方程式では、時間とともに巨視的(マクロ)な物理量である運動量が変化しますが、Schrodinger描像では、運動量に対応する演算子はまったく変化せず、状態を表す波動関数が変化した結果、その期待値が変化するのです」

古典的なNewtonの運動方程式とのイメージの違い
古典的なNewtonの運動方程式:時間とともに巨視的(マクロ)な物理量である運動量が変化する
Schrodinger描像:運動量に対応する演算子はまったく変化せず、状態を表す波動関数が変化した結果、その期待値が変化する

「このイメージは直観的に分かりにくいかもしれませんね」