昇降演算子とは
「単振動のハミルトニアン(エネルギーに相当)は、次のようになることが知られています」
「『SHO』って何よ?」
「『SHO』は、『Simple Harmonic Oscillator(調和振動子)』の略です。ここで、ハミルトニアンの固有値を見つけるため、場と運動量を次のように昇降演算子(ladder operator)の観点で表します」
(2.23)
「昇降演算子?」
一宮は首をかしげた。
「エレベーターを『昇降機』と呼ぶことは知っていますよね?」
「それくらい知ってるわよ」
「『昇降演算子(ladder)』とは、ちょうどエレベーターが上下に行ったり来たりするように、物理的な状態に作用して、その固有値の数を増やしたり、減らしたりする演算子です」
「固有値?」
「巨視的(マクロ)な物理量に対応した演算子をある状態に作用させて得られた値が一意的に定まるとき、その値をその演算子の固有値(eigenvalue)と呼びます。また、そのときの状態を演算子の固有関数(eigenfunction)(ベクトルの場合は、固有ベクトル)と呼びます」
固有値(eigenvalue)と固有関数(eigenfunction):
巨視的(マクロ)な物理量に対応した演算子をある状態に作用させて得られた値が一意的に定まるとき、その値をその演算子の固有値と呼び、また、そのときの状態を演算子の固有関数(ベクトルの場合は、固有ベクトル)と呼ぶ。
「また、固有値と固有関数の関係は、次のように式で書くことができます」
「ここで、状態が個の粒子を含む状態とすると、昇降演算子は次のように表されます」
「演算子(aダガーと呼ぶ。ダガー(dagger)は『短剣、短刀』の意。記号の形が短剣状になっていることから、こう呼ばれる)は固有値を1つだけ増やすため、生成演算子と呼ばれ、演算子は固有値を1つだけ減らすため、消滅演算子と呼ばれます」