スーパーサイエンスガール

日々科学と格闘する理系高校生達の超絶難解な日常。

昇降演算子とは

「単振動のハミルトニアン(エネルギーに相当)は、次のようになることが知られています」


{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
H_{\textrm{SHO}}&=&\frac{1}{2}p^2+\frac{1}{2}\omega^2\phi^2.
\end{eqnarray}
}

「『SHO』って何よ?」
「『SHO』は、『Simple Harmonic Oscillator(調和振動子)』の略です。ここで、ハミルトニアン H_{\textrm{SHO}}固有値を見つけるため、場 \varphiと運動量 pを次のように昇降演算子(ladder operator)の観点で表します」


{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\phi=\frac{1}{\sqrt{2\omega}}(a+a^\dagger)\textrm{;}\,\,\,\,\,\,\,\, p=-i\sqrt{\frac{\omega}{2}}(a-a^\dagger).
\end{eqnarray}
}
(2.23)

「昇降演算子?」
 一宮は首をかしげた。
「エレベーターを『昇降機』と呼ぶことは知っていますよね?」
「それくらい知ってるわよ」

「『昇降演算子(ladder)』とは、ちょうどエレベーターが上下に行ったり来たりするように、物理的な状態に作用して、その固有値の数を増やしたり、減らしたりする演算子です」
固有値?」
「巨視的(マクロ)な物理量に対応した演算子 \hat{A}をある状態 \psiに作用させて得られた値が一意的に定まるとき、その値 aをその演算子 \hat{A}固有値(eigenvalue)と呼びます。また、そのときの状態 \psi演算子 \hat{A}の固有関数(eigenfunction)(ベクトルの場合は、固有ベクトル)と呼びます」

固有値(eigenvalue)と固有関数(eigenfunction):
巨視的(マクロ)な物理量に対応した演算子 \hat{A}をある状態 \psiに作用させて得られた値が一意的に定まるとき、その値 aをその演算子 \hat{A}固有値と呼び、また、そのときの状態 \psi演算子 \hat{A}の固有関数(ベクトルの場合は、固有ベクトル)と呼ぶ。

「また、固有値と固有関数の関係は、次のように式で書くことができます」


{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\hat{A}\psi&=&a\psi
\end{eqnarray}
}
a: 演算子 \hat{A}固有値
 \psi演算子 \hat{A}の固有関数

「ここで、状態 \psi_n=\mid n\rangle n個の粒子を含む状態とすると、昇降演算子は次のように表されます」


{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\mid n+1\rangle&=&c_n a^\dagger\mid n\rangle\\
\mid n-1\rangle&=&d_n a\mid n\rangle
\end{eqnarray}
}

演算子 a^\dagger(aダガーと呼ぶ。ダガー(dagger)は『短剣、短刀』の意。記号の形が短剣状になっていることから、こう呼ばれる)は固有値を1つだけ増やすため、生成演算子と呼ばれ、演算子 a固有値を1つだけ減らすため、消滅演算子と呼ばれます」

昇降演算子(ladder operator)
生成演算子 a^\dagger固有値を1つだけ増やす
消滅演算子 a固有値を1つだけ減らす