零点エネルギーとは
「正準交換関係は、(2.20)の関係からとなることがわかります」
(2.20)
「一方、の関係を使って、正準交換関係を計算してみます」
「これから、となって、次の(2.24)式の関係が得られます」
(2.24)
「次に、式(2.23)を代入してハミルトニアンを計算してみます」
(2.23)
「ここで、真空状態にハミルトニアンを左側から作用させると、次のようになります」
「ところで、真空状態は、消滅すべき粒子が存在しない状態であるため、真空状態に消滅演算子を作用させても、その確率振幅は0になります。それゆえ、となるため、上の式は次のようになります」
「結局、真空状態の固有値は、となります。この真空状態のエネルギーは、『零点エネルギー(zero-point energy)』と呼ばれます」
零点エネルギー(zero-point energy):真空状態のエネルギー
「つまり、真空状態にも、エネルギーが存在するってわけ?」
一宮が訊ねた。
「そうですね。どんなに空虚で空っぽの空間にも、エネルギーが存在することになります」
「空虚で空っぽの空間なのに、どうしてエネルギーが存在するのよ?」
一宮は腑に落ちないような顔をした。
「量子力学では、位置と運動量との間の不確定性原理によって、粒子を一点に静止した状態を実現することができません。それゆえ、粒子は常に振動した状態になります。このような不確定性原理に起因する振動を零点振動(zero-point oscillation)と呼びます」
零点振動(zero-point oscillation)
位置と運動量との間の不確定性原理
↓
粒子を一点に静止した状態を実現することができず、粒子は常に振動した状態となる
「また、粒子の本質が波動であることを考えれば、零点エネルギーは、波動そのものが有するエネルギーと考えることもできます」
零点エネルギーは、波動性に由来する
「ちなみに、固体の零点エネルギーの合計は、絶対零度における内部エネルギーであることから、これが『零点エネルギー』という言葉の由来となったそうです」