因果律が保たれているか否かの検証の大まかな流れ
「時間的・空間的な伝搬粒子のクライン‐ゴルドン場の振幅が求まったので、これらの結果に基づいて、因果律について考察してみましょう」
(2.52)
「前回導いた(2.52)式から、空間的な領域、すなわち、光円錐の外側では、伝搬振幅が指数関数的に減衰しますが、ゼロにはならないことがわかります」
「ということは、光より速い領域でも、粒子が存在できるということ?」
一宮が瞳を輝かせた。
「(2.52)式の結果のみを見れば、そのような結論が得られますが、実際に因果律を議論するときは、粒子が光よりも速い空間的領域上を伝搬できるか否かについて問うべきではありません。ある一点でなされた測定が、光速を超える空間的な領域だけ離れた別の一点でなされる測定に影響を与えうるか否かについて問うべきだと、テキストの著者は言っています」
「なんでそんな必要があるのよ?」
一宮が腑に落ちない顔でいった。
「なぜなら、これまでの計算では、単一粒子の振幅のみを計算していたからです。でも、実際には、単一粒子の観測結果が他の粒子の観測結果の影響を受ける可能性も考慮する必要があります。だから、単一粒子の観測結果が他の粒子の観測結果の影響を受けていないかどうかを確認する必要があるのです」
因果律が保たれているか否かの検証の大まかな流れ
単一粒子のクライン‐ゴルドン場の計算によれば、『光速を超える粒子が存在する』という結論が得られる
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しかしながら、単一粒子の観測結果が他の粒子の観測結果の影響を受ける可能性も考慮する必要がある
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そこで、ある一点でなされた測定が、光速を超える空間的な領域だけ離れた別の一点でなされる測定に影響を与えうるか否かについて考える必要がある
「そこで、上のような方針のもとで、今度はある一点でなされた測定が、光速を超える空間的な領域だけ離れた別の一点でなされる測定に影響を与えうるか否かについて考えることにします」