スーパーサイエンスガール

日々科学と格闘する理系高校生達の超絶難解な日常。

複素クライン‐ゴルドン場の伝搬振幅の物理的意味

「第2.1節の終わりで示唆したように、クライン‐ゴルドン理論において、因果律が保たれることが分かりました。しかしながら、このメカニズムを適切に理解するために、粒子と反粒子の区別ができる複素クライン‐ゴルドン場(complex Klien-Gordon field)を含むように議論を拡張すべきです。場 \varphi(x)を実数値と考えるより、複素数と考えることによってクライン‐ゴルドン理論に保存電荷を加えることができることは、(2.15)式の説明で言及しました」

{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\alpha\Delta\phi&=&i\alpha\phi;\,\,\,\,\,\,\,\,\,\alpha\Delta\phi^*=-i\alpha\phi^*
\end{eqnarray}
}
(2.15)

「複素スカラー場の理論量子化されると(問題2.2を参照。問題2.2については後述します)、場 \varphi(x)は正電荷の粒子を生成し、負電荷の粒子を消滅させます。一方、場 \varphi^\dagger(x)は上と反対の操作を行います」

 \varphi(x):正電荷の粒子を生成し、負電荷の粒子を消滅させる
 \varphi^\dagger(x):正電荷の粒子を消滅させ、負電荷の粒子を生成する

「このように、場 \varphi(x)と場 \varphi^\dagger(x)とは異なる働きを持つため、交換子 [\varphi(x), \varphi^\dagger(y)]はゼロでない寄与を有します。それゆえ、因果律が保たれるには、これらの寄与が光円錐の外側で絶妙に相殺する必要があります。これらの2つの寄与について、(2.53)式の2つの項(ただし電荷を有します)の時空間の解釈があります」

{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\big[\phi(x), \phi(y)\big] &=&\int\frac{d^3p}{(2\pi)^3}\frac{1}{\sqrt{2E_{\bf{p}}}}
\int\frac{d^3q}{(2\pi)^3}\frac{1}{\sqrt{2E_{\bf{q}}}}\\
&&\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,
\times\big[( a_{\bf{p}}e^{-ip\cdot x}+ a_{\bf{p}}^\dagger e^{ip\cdot x}), (a_{\bf{q}}e^{-iq\cdot y}+ a_{\bf{q}}^\dagger e^{iq\cdot y})\big]\\
&=&\int\frac{d^3p}{(2\pi)^3}\frac{1}{2E_{\bf{p}}}(e^{-ip\cdot (x-y)} -e^{ip\cdot (x-y)})\\
&=&D(x-y)-D(y-x).
\end{eqnarray}
}
(2.53)

「(2.53)式において、第1項 D(x-y)は、 yから xへの負電荷の伝搬を表します。また、第2項 D(y-x)は、 xから yへの正電荷の伝搬を表します」

 D(x-y) yから xへの負電荷の伝搬を表す
 D(y-x) xから yへの正電荷の伝搬を表す

「これら2つの過程が存在し、振幅が相殺するためには、これらの粒子が両方とも存在し、同一の質量を有する必要があります。そして、量子場の理論においては、どの粒子に対しても、同一質量と反対の量子数(この場合は、電荷です)を有する反粒子が存在します」

 D(x-y) yから xへの粒子(または反粒子)の伝搬を表す
 D(y-x) xから yへの反粒子(または粒子)の伝搬を表す

「なお、実数値のクライン‐ゴルドン場については、粒子がそれ自身の反粒子となります」