複素クライン‐ゴルドン場の伝搬振幅の物理的意味
「第2.1節の終わりで示唆したように、クライン‐ゴルドン理論において、因果律が保たれることが分かりました。しかしながら、このメカニズムを適切に理解するために、粒子と反粒子の区別ができる複素クライン‐ゴルドン場(complex Klien-Gordon field)を含むように議論を拡張すべきです。場を実数値と考えるより、複素数と考えることによってクライン‐ゴルドン理論に保存電荷を加えることができることは、(2.15)式の説明で言及しました」
(2.15)
「複素スカラー場の理論が量子化されると(問題2.2を参照。問題2.2については後述します)、場は正電荷の粒子を生成し、負電荷の粒子を消滅させます。一方、場は上と反対の操作を行います」
「このように、場と場とは異なる働きを持つため、交換子はゼロでない寄与を有します。それゆえ、因果律が保たれるには、これらの寄与が光円錐の外側で絶妙に相殺する必要があります。これらの2つの寄与について、(2.53)式の2つの項(ただし電荷を有します)の時空間の解釈があります」
(2.53)
「(2.53)式において、第1項は、からへの負電荷の伝搬を表します。また、第2項は、からへの正電荷の伝搬を表します」
「これら2つの過程が存在し、振幅が相殺するためには、これらの粒子が両方とも存在し、同一の質量を有する必要があります。そして、量子場の理論においては、どの粒子に対しても、同一質量と反対の量子数(この場合は、電荷です)を有する反粒子が存在します」