超光速の粒子に働く超光速の相関
「それで、結局のところ、超光速の粒子は存在するの?」
一宮が訊ねる。
「クライン‐ゴルドン場の理論によれば、超光速の粒子は存在することになります」
「ほんとなの?」
予想外の言葉に意表をつかれたように、一宮は押し黙った。
「本当です。実際、超光速の空間的領域()において、粒子の伝搬振幅がゼロではないことを、下の(2.52)式が示しています」
(2.52)
「でも、それはあくまで単一粒子の場合での話であって、実際には、他の粒子の影響も考えないといけないんじゃないですか?」
石原が橫から口を差しはさむと、越野さんが頷いた。
「たしかに、他の粒子からの影響も考慮する必要があります。そこで、ある粒子を測定したときに、他の粒子の測定に影響を与えているか否かを確かめるべく、場の交換関係を計算しました」
(2.53)
「上の(2.53)式は、2つの地点の場が不確定性原理による相関を有するか否かを確かめるものです。 がゼロでなければ、場が不確定性関係による相関をもつことを示します」
「不確定性原理による相関ってことは、つまりは、一方の量を測定すれば、もう一方の測定量も瞬時に影響を受けるということか」
俺がつぶやくと、越野さんは同意した。
「そういうことになりますね」
「それじゃ、不確定性原理による相関自体、まるで超光速の相関みたいなものじゃない?」
そういって一宮は、突然何かに気づいたように、はっとしたように瞳を光らせた。
「ちょっと待って。ということは、もともと単独で超光速の粒子が存在する上に、さらに他の粒子からの超光速の相関が働くってこと?」
超光速の粒子が存在する
↓
不確定性原理による他の粒子からの超光速の相関がさらに働く
「これまで導いてきた式を厳密に解釈すれば、そういうことになりますね」