スーパーサイエンスガール

日々科学と格闘する理系高校生達の超絶難解な日常。

遅延グリーン関数を用いた運動方程式の解2

「ちょっと待って!」
 突然、一宮が待ったをかけた。
「そもそもどうして、(2.63)式の第1行目の式が成り立つのよ?」


{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\phi(x)&=&\phi_0(x)+i\int d^4y D_R(x-y)j(y)\\
&=&\phi_0(x)+i\int d^4y\int\frac{d^3p}{(2\pi)^3}\frac{1}{2E_{\bf{p}}}\theta(x^0-y^0)\times(e^{-ip\cdot(x-y)}-e^{ip\cdot(x-y)})j(y).
\end{eqnarray}
}
(2.63)

「(2.63)式の第1行目ですが」と越野さんは言った。
「これは、(2.63)式の両辺に左側から (\partial^2+m^2)を作用させることによって確認することができます」

(2.63)式の両辺に左側から (\partial^2+m^2)を作用させる
{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
(\partial^2+m^2)\phi(x)&=&(\partial^2+m^2)\phi_0(x)+i\int d^4y (\partial^2+m^2)D_R(x-y)j(y)
\end{eqnarray}
}

「ここで、初期値においては、源である場 j(x)がゼロなので、(2.61)式から初期の場 \phi_0(x)が満たす式を導くことができます」


{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
(\partial^2+m^2)\phi(x)&=&j(x),
\end{eqnarray}
}
(2.61)

(2.61)式において、 j(x)をゼロとした場合
{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
(\partial^2+m^2)\phi_0(x)=0
\end{eqnarray}
}

「また、 D_R(x-y)については、以前導いた(2.56)式の関係が成り立ちます」


{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
(\partial^2+m^2)D_R(x-y)&=&-i\delta^{(4)}(x-y).
\end{eqnarray}
}
(2.56)

「これらの関係を上の (\partial^2+m^2)\phi(x)の式に代入すると、次のようになります」


{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
(\partial^2+m^2)\phi(x)&=&(\partial^2+m^2)\phi_0(x)+i\int d^4y (\partial^2+m^2)D_R(x-y)j(y)\\
&=&0+i\int d^4y(-i\delta^{(4)}(x-y))j(y)\\
&=&\int d^4y\delta^{(4)}(x-y)j(y)\\
&=&j(x)
\end{eqnarray}
}

「第3行目の y積分において、 \delta^{(4)}(x-y)関数が x=yの場合のみ1となり、それ以外( x\neq y)ではゼロになるという性質を用いました。これは(2.61)式の関係そのものであり、このことから、(2.63)式の第1行目の関係が成り立つことが分かります」


{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
(\partial^2+m^2)\phi(x)&=&j(x),
\end{eqnarray}
}
(2.61)