エネルギー・運動量テンソルを対称的にする方法
「次に、計量テンソルを用いて、エネルギー・運動量テンソルの添字を上付きにします」
「ここで問題なのは、通常の手続きでは、対称テンソルを導くことができないという点です。実際、上のエネルギー・運動量テンソルは、添字の入れ替えに対して対称的ではありません」
「どうしてテンソルが対称じゃないとダメなのよ?」
一宮が訊ねた。
「これは、下の一般相対性理論の基本方程式において、エネルギー・運動量テンソルが対称だからです」
一般相対性理論の基本方程式
「このエネルギー・運動量テンソルが対称テンソルでないという問題を解決すべく、テキストではの形での項を加えることを提案しています。ここで、の項は、最初の2つの添字において反対称(すなわち、)です。このようなものは自動的に発散がなくなり、は、同じく全体的にエネルギーと運動量が保存された等しく良好なエネルギー・運動量テンソルになるといっています」
「どうして発散がなくなるのよ?」
一宮が首を傾げた。
「実際、の添字を入れ替えた式は、の添字についての反対称性からとなります。それゆえ、全ての添字についての和をとると、添字を入れ替える前の式と入れ替えた後の式とがちょうどプラスマイナスになって打ち消し合うため、のように発散がゼロになるのです」