ユニタリ変換とは
「ところで、上の保存電荷(ネーター・チャージ)の式は、(は実数)として、位相変換に対して不変となることがわかります。ここで、は、一次元のユニタリ変換と見なすことができます」
「ユニタリ変換ってなによ?」
一宮が首を傾げた。
「ユニタリ変換は、ざっくりいえば、変換の前後で距離や角度を変えない変換です」
ユニタリ変換の性質1(等距離性):
変換の前後で距離や角度を変えない
「なお、ここでいう等距離性とは、角度情報を含めた距離、すなわち、内積(スカラー積)の値を変えない性質を意味します」
等距離性:角度情報を含めた距離(内積)を変えない性質
「また、ユニタリ変換の定義には、もう1つ条件があって、ヒルベルト空間(無限次元までの実数空間または複素数空間)において、変換先の任意の空間要素に対し、必ず対応する変換元の空間要素が存在するという性質を有します」
ユニタリ変換の性質2(全射性):
ヒルベルト空間(無限次元の実数空間または複素数空間)において、変換先の任意の空間要素に対し、必ず対応する変換元の空間要素が存在する
「ちなみに、ユニタリ変換のユニタリ(Unitary)には、『単位の、単一の』という意味があります」
ユニタリ(Unitary):単位の、単一の
「単位? どうして単位なのよ?」
「詳細は省きますが、ユニタリ変換を線形演算子で表したとき、上の条件(1)は、のエルミート共役を、を恒等演算子として、と表されます。また、上の条件(2)は、と表されます」
ユニタリ変換の性質1(等距離性):
ユニタリ変換の性質2(全射性):
「このように、ユニタリ変換の性質には、恒等演算子1が現れます。 この1がある意味、単位(unit)となるため、ユニタリ(unitary)変換という名称が付いたのだと思います」