2粒子系の散乱の微分断面積の式
散乱の微小確率:
「ここで、デルタ関数は、、すなわち、のときに1になり、それ以外では0になります。これは、衝突前の粒子のエネルギーの総和と、衝突後の粒子のエネルギーの総和が保存する場合を示しています。それゆえ、式は次のようになります」
散乱の微小確率:(ただし、)
「ここでの目標は、微分断面積を求めることなので、次に、散乱の微小確率と散乱の微小断面積との関係を求めてみましょう。散乱確率は、下図のように、全体積内に存在する入射粒子のうち、散乱断面積内に入射する粒子の割合で表されます]
「上図においては、全体積内に存在する14個の粒子のうち、8個の粒子が散乱断面積内に入射するため、その散乱確率は、8/14=4/7=0.57となります。ここで、入射粒子の密度を、入射粒子の速度をとすると、時間の間に散乱断面積内に入射する粒子の数は、とかけます。一方、全体積内の入射粒子の数は、とかけるため、結局、粒子の散乱確率は、次のようになります」
「この問題の場合、電子と陽電子との間の散乱を考えているので、入射粒子の速度は、陽電子に対する電子の相対速度と考えることができます。ここで、電子の速度は、電子の運動量と電子のエネルギーを用いて、次のようにかくことができます」
電子の速度
「ちょっと待ってよ! どうして、運動量をエネルギーで割った値が、速度になるのよ?」
一宮が突然憤慨するように言った。
「相対性理論によれば、粒子の速度は、次のように表すことができます」
「自然単位系では、とみなせるので、結局、運動量をエネルギーで割った値が速度になるのです。それゆえ、電子の速度[v_p]および陽電子の速度は、次のように表すことができます」
電子の速度
陽電子の速度
「結局、陽電子に対する電子の相対速度は、次のようになります」
「上式を、粒子の散乱確率の式に代入すると、次のようになります」
「また、散乱の微小確率と微小断面積との間にも同様の関係が成り立ちます」
「この式が、ブラケットの計算から求めた散乱の微小確率の式に等しいとおくことにより、微分断面積の式を導くことができます」
散乱の微小確率:
「ここで、とおくと、2粒子系の散乱の微分断面積の式は、最終的に次のようになります」