スーパーサイエンスガール

日々科学と格闘する理系高校生達の超絶難解な日常。

量子力学

ベッセル関数とは

相対論的な粒子の確率振幅U(t) 「上の式において、は、第2種変形ベッセル関数と呼ばれる」 「第2種変形ベッセル関数?」 一宮の質問に答える代わりに、武者さんは黙ってMacBook Airのキーを叩き、ターミナルを起動させた。 「何をやってるのよ?」 「いま…

欧米の積分公式集のルーツ

「『岩波 数学公式』にも載っていないような公式が載っているなんてすごい本ね」 「欧米の積分表の歴史を考えれば、日本が勝てるわけがない」 「そんなに歴史があるの?」 武者さんは頷いた。 「欧米の積分表のルーツは、1810年にドイツの数学者マイヤー・ヒ…

ロシアの積分公式集

相対論的な粒子の確率振幅U(t) 「上式では、運動量pについての積分が残されていますが、このテキストによれば、これはベッセル(Bessel)関数の観点から明確に評価できるとのことです」 「ベッセル関数って何よ?」 一宮の質問に、越野さんは少し表情を曇ら…

相対論的な粒子の確率振幅

「次は、相対論的な粒子の確率振幅について考えてみます。相対論的な粒子のエネルギーは、アインシュタインの関係式からの形にかけるので、この値をハミルトニアンに代入すると、次のようになります」 「ここで、1行目から2行目の式変形には、積分による完…

非相対論的な粒子の振幅

「積分による完備関係式、を用いると、ケットベクトルは、次のように、運動量空間の正規直交系で展開できます」 「展開の結果、という式があらわれますが、これはx-表示からp-表示への変換関数と呼ばれます」 :x-表示からp-表示への変換関数 「ここで、の物…

コーシー列と正規直交系の展開との関係

「コーシー列による完備の定義についてはよく分かった。だが、俺にはこのコーシー列による完備の定義と正規直交系の展開は、どこにも接点がないというか、ぜんぜん別物のように思えるんだが?」 俺の疑問: コーシー列による完備の定義と正規直交系の展開は…

完備とは

「完備関係式については、よくわかったわ。でも、そもそもどうして『完備』なんて、意味不明の言葉を使うのよ?」 一宮が不満そうに言った。 「『完備』という言葉はたしかに分かりにくいですね。こういうときは、英語で考えると理解できることが多いです。…

完備関係式とは

「ここで、非相対論的な自由粒子を例に、この振幅の具体的な値を実際に計算してみましょう。非相対論において、質量、運動量の自由粒子の運動エネルギーは、とかけるため、この式をハミルトニアン(ハミルトニアンは、一般化座標であらわしたエネルギー)に…

自由粒子の振幅

「それでは、今度こそ、本当に第2章に入ります」 越野さんは、一宮がまた変な質問をするのではないかと、ビクビクしながらときどき一宮の様子をうかがっていた。 だが、一宮はさっきの敗北に懲り懲りしたのか、椅子に座って大人しくしていた。シャープペン…

仮想粒子とは

一宮が突きつけた難問に悩み苦しむ俺に、救いの手を差し伸べてくれたのは、やはり越野さんだった。 「あの、すみません。その問題の答えは、テキストに書いてありました」 「なんだって?」 俺と一宮は、越野さんのほうを一斉に見た。 「この問題は、ハイゼ…

幽霊のような粒子

「量子力学と場の量子論の違いが分かったところで、第2章の本題に入りましょうか」 「ちょっと待って!」 一宮が再び手を上げた。 「なんでしょうか。一宮さん」 一宮は目を輝かせながら微笑していた。 「いま、私の頭に素晴らしいアイデアが浮かんだわ。み…

エーテルは死んだ?

「場は、時空間を満たすっていうけど、それってオカルトでいうところの『気』とか『エーテル』じゃないの?」 突然、一宮が突拍子もないことを言い出した。 気:中国哲学や東洋医学において、万物を構成する要素であり、生命力の源と考えられていた。 エーテ…

場の量子論とは

「量子力学は、ミクロの世界の対象を扱う力学というのは、よく分かったわ。それじゃ、場の量子論って何よ?」 一宮が再び質問する。 「場の量子論では、電場や磁場のように、目には見えませんが、時空間を満たす『場』という存在を考えます」 「場?」 「さ…

量子力学とは

「それでは第2章を始めます」 第2章の輪講は、適当なところまで越野さんが担当することになった。 「ふつつか者ですが、よろしくお願いいたします」 お辞儀した瞬間、越野さんの豊満な胸の谷間が垣間見えた。少なくともEカップはあるだろうか。女子高生の…

ファインマン図の高次の摂動の寄与

「最後に、高次の摂動項の散乱断面積の計算を行う。ファインマンのおかげで、この図を描くことは少なくとも容易になった。図1.4は、の散乱断面積において、微細構造定数の3乗の項()に寄与するファインマン図を示す」図1.4 「ここで注目すべきなのは、ファ…

Bhabha散乱とは

「また、異なる基準座標系を用いた計算も容易になる。例えば、振幅と散乱断面積との間の関係を示す(1.1)式の修正のみで事足りる。 散乱の微分断面積: 「あるいは、重心系の計算により得られた結果に、単純にローレンツ変換を行うこともできる。始状態および…

散乱において電子の質量を無視できる場合

「ファインマン則とファインマン・トレース技術は、とてもパワフルなので、単純化の仮定をいくつか緩めることもできる。例えば、電子の質量が無視できるという仮定がある。なぜなら、電子はミュー粒子より200倍も軽いため、ビームエネルギーがミュー粒子を作…

ファインマン・トレース技術とは

「ここで、(1.10)式のような式を扱うため、特に非偏極断面積(unpolarized cross section)のみを計算したいときに、多くの有用な技術を用いることができる。この技術は、ガンマ行列の積のトレースを評価しなければならないことから、『ファインマン・トレー…

ファインマン則から求めた遷移振幅の表式

「外線の4成分の列スピノルまたは行スピノルは、それぞれ始状態および終状態の運動量空間の波動関数で、およびに相当する」図1.5 「添字およびは、上向きスピンまたは下向きスピンのスピン状態をあらわす。ここで、上の図1.5のファインマン図の要素から直接…

スピノルとは

「外線は、4成分の列スピノルまたは行スピノルをあらわす」 「スピノル?」 「スピノル(spinor)は、ベクトルのように大きさと向きをもつ量で、スピン状態をあらわす。ベクトルの長さが座標系の回転によっても変わらないように、スピノルの大きさも座標系…

ガンマ行列とは

「ところで、こののって何よ?」 「は、4つ1組の4×4の行列で、ガンマ行列と呼ばれる」 「ガンマ行列?」 「ガンマ行列は、ディラック・パウリ行列を用いて次のように定義される」 ただし、 「ディラック・パウリの行列は、次のような4×4の行列であり、相対…

ベクトル粒子とは

「ファインマン図の各頂点は、相互作用ハミルトニアンに相当するが対応する。は4つ1組の4×4の行列で、2つのスピンの粒子をベクトル粒子に結合させて、角運動量を加える働きをする」 「ベクトル粒子って何よ?」 「ベクトル粒子とは、スピン量子数が1で…

プロパゲーターとは

「ファインマンズ図において、光子をあらわす内線にが対応する。これは、プロパゲーター(propagator、伝搬関数)と呼ばれ、ある時空間上の点に生じた粒子が、時空間上の他の点で観測される確率振幅をあらわす」 プロパゲーター(伝搬関数): ある時空間上…

計量テンソルとは

「また、ファインマン図において、光子をあらわす内線にが対応する。ここで、は、ミンコフスキー計量テンソルをあらわし、は、仮想光子の4元運動量をあらわす」 「ミンコフスキー計量テンソルって何よ?」 「おまえ、さっきから質問ばかりしているな」 俺が…

散乱への高次の摂動の寄与

散乱の微分断面積: 「1.8式と1.9式からもわかるように、散乱の微分断面積は角度に依存し、また、散乱の微分断面積と散乱断面積は、エネルギーの二乗に反比例することがわかる。そして、これらの計算結果は、実験結果と10%しか違わない」 「なによ、小難しい…

スピンを考慮した2粒子系の全散乱断面積

「これらの式から、は次のようになる」 「このを(1.1)式に代入すると、スピンを考慮した2粒子系の散乱の微分断面積が求められる」 散乱の微分断面積: 「ここで、(自然単位系では素電荷、は微細構造定数と呼ばれる)とした。上の式を角度変数とについて積…

Clebsch-Gordan係数とは

「次に、電子と陽電子のスピンの合成を考えると、のClebsch-Gordan係数があらわれる」 「くれぶすごるだん……係数?」 一宮が首を傾げる。 「Clebsch-Gordan係数は、角運動量を合成する際に得られる係数。ここで、電子および陽電子のスピン角運動量の大きさは…

縦偏極光子とは

「次に、電子と陽電子がいずれも進行方向に対して右回りのスピンを有する場合を考える」「このとき、電子と陽電子がいずれも進行方向に対して右回りのスピンを有することから、それぞれのz軸方向のスピン角運動量が互いに打ち消し合ってゼロになる。また、光…

スピンをもった2粒子系の散乱の遷移振幅の表式

「右回りのスピンを、左回りのスピンをとすると、電子と陽電子のスピンのセットからミュー粒子と反ミュー粒子のセットへの遷移振幅は、次のようにかける」 (1.6) 「どうして、遷移振幅の符号がマイナスになるのよ?」 「符号がマイナスになるのは、電子の電…

複素共役とは

(1.5) 「次に、(1.5)式の複素共役(ふくそきょうやく)をとると、次のようになる」 「複素共役?」 「複素共役とは、複素数に対して、その虚部の符号を入れ替えた複素数を求めること。もとの複素数をとすれば、その複素共役はで表す」 「どうして複素共役を…