スーパーサイエンスガール

日々科学と格闘する理系高校生達の超絶難解な日常。

運動量空間の極座標への変換

散乱の微小確率: 
d\Gamma=\frac{T|M|^2}{64\pi^2V E_kE_k^\prime E_p E_p^\prime}\delta(E_k+E_k^\prime-E_p-E_p^\prime)d^3{\bf{k}}

「上の式をみると、積分変数が運動量 d^3\bf{k}であるのに対し、デルタ関数がエネルギーの関数\delta(E_k+E_k^\prime-E_p-E_p^\prime)となって、積分変数と被積分変数とが一致していません。そこで、運動量の積分変数 d^3\bf{k}をエネルギーの積分変数の式に変換することを考えます」

積分変数:運動量 d^3\bf{k}
デルタ関数:エネルギーの関数\delta(E_k+E_k^\prime-E_p-E_p^\prime)
積分変数と被積分変数とが一致しない
 ↓
運動量の積分変数 d^3\bf{k}をエネルギーの積分変数の式に変換する

「具体的な方法としては、電子e^-陽電子e^+のエネルギー E_k, E_k^\primeが、それぞれアインシュタインの関係 E_k=(|{\bf{k}}|^2+m^{2})^{\frac{1}{2}}, E_k^\prime=(|{\bf{k}}|^2+m^{\prime 2})^{\frac{1}{2}}を満たすことを利用します」

アインシュタインの関係
電子e^-のエネルギー E_k=(|{\bf{k}}|^2+m^{2})^{\frac{1}{2}},
陽電子e^+のエネルギーE_k^\prime=(|{\bf{k}}|^2+m^{\prime 2})^{\frac{1}{2}}

「そこで、エネルギーと運動量との間の関係を求めるために、電子e^-陽電子e^-のエネルギーの和 E_k+E_k^\primeを、電子e^-の運動量の大きさ |\bf{k}|微分した式を考えてみます」

電子e^-陽電子e^-のエネルギーの和 E_k+E_k^\prime=(|{\bf{k}}|^2+m^{2})^{\frac{1}{2}}+(|{\bf{k}}|^2+m^{\prime 2})^{\frac{1}{2}}を、電子e^-の運動量の大きさ |{\bf{k}}|微分する


計算)      
 \begin{eqnarray}
E_k+E_k^\prime&=&(|{\bf{k}}|^2+m^{2})^{\frac{1}{2}}+(|{\bf{k}}|^2+m^{\prime 2})^{\frac{1}{2}}\\
\frac{d(E_k+E_k^\prime)}{d|{\bf{k}}|}&=&\frac{1}{2}\cdot\frac{2|{\bf{k}}|}{(|{\bf{k}}|^2+m^{2})^{\frac{1}{2}}}+\frac{1}{2}\cdot\frac{2|{\bf{k}}|}{(|{\bf{k}}|^2+m^{\prime 2})^{\frac{1}{2}}}\\
&=&\bigg(\frac{1}{E_k}+\frac{1}{E_k^\prime}\bigg) |\bf{k}|\\
&=&\frac{E_k+E_k^\prime}{E_kE_k^\prime}|{\bf{k}}|\\
 \end{eqnarray}

 \therefore d(E_k+E_k^\prime)= \frac{E_k+E_k^\prime}{E_kE_k^\prime}|{\bf{k}}|d|{\bf{k}}|

「一方、 d^3{\bf{k}}は、運動量空間における3次元の体積の微小変化であり、これは動径方向の微小変化 d|{\bf{k}}|と、角度方向の微小変化 |{\bf{k}}|^2d\Omega \Omegaは立体角)との積に等しいため、次の関係式を導くことができます」

f:id:Dreistein:20141030053928p:plain

 d^3{\bf{k}}=|{\bf{k}}|^2 d|{\bf{k}}|d\Omega

「この式と、さきほど微分で求めた d(E_k+E_k^\prime)の式とを比較すると、運動量とエネルギーとの間の関係式が求まります」

 d^3{\bf{k}}=|{\bf{k}}|\frac{ d(E_k+E_k^\prime)}{E_k+E_k^\prime} E_kE_k^\prime d\Omega

「したがって、上の式を代入すると、散乱の微小確率の式は、次のようになります」

散乱の微小確率: 
d\Gamma=\frac{T|M|^2|{\bf{k}}|}{64\pi^2VE_pE_p^\prime (E_k+E_k^\prime)}\delta(E_k+E_k^\prime-E_p-E_p^\prime) d(E_k+E_k^\prime)d\Omega