スーパーサイエンスガール

日々科学と格闘する理系高校生達の超絶難解な日常。

2014-10-01から1ヶ月間の記事一覧

2粒子系の散乱の微分断面積の式

散乱の微小確率: 「ここで、デルタ関数は、、すなわち、のときに1になり、それ以外では0になります。これは、衝突前の粒子のエネルギーの総和と、衝突後の粒子のエネルギーの総和が保存する場合を示しています。それゆえ、式は次のようになります」 散乱の…

運動量空間の極座標への変換

散乱の微小確率: 「上の式をみると、積分変数が運動量であるのに対し、デルタ関数がエネルギーの関数となって、積分変数と被積分変数とが一致していません。そこで、運動量の積分変数をエネルギーの積分変数の式に変換することを考えます」 積分変数:運動…

重心系で考えることのメリット

散乱の微小確率: 「積分変数が多いので、少し整理しましょう。運動量の積分変数としては、ミュー粒子の運動量の積分変数と反ミュー粒子の運動量の積分変数の2種類がありますが、今は重心系を考えているので、ミュー粒子の運動量と反ミュー粒子の運動量との…

デルタ関数の積分

「始状態のブラケットが計算できたところで、次に、散乱をあらわすブラケットを計算してみましょう。散乱をあらわすブラケットは、散乱振幅を使って、次のように書くことができることは、以前お話しました」 「は、エネルギー(1次元)と運動量(3次元)を…

ブラケットの具体的な計算法

反交換関係 (ただし、、 また、) 「一般的にフェルミ粒子の反交換関係は、上式のようになりますが、相対論的な効果を考慮すると、ローレンツ不変な不変規格化定数が右辺にかかります」 反交換関係 「ここで、運動量の連続性から、としていることに注意して…

フェルミ粒子とは

散乱の微小確率: 「次に、上の式のブラケットの中身を計算してみましょう。まずは分母のブラケットを計算してみます。始状態から、は、次のように書くことが出来ます」 「ここで、電子・陽電子はいずれもフェルミ粒子なので、反交換関係が成り立ちます。こ…

4元運動量とは

「でも、この問題の場合、のように位置xの関数でなく、 のように波数kの関数だから、お前のいっていることは、逆じゃないのか?」 俺が指摘すると、石原は微笑んだ。 「この場合、xとkを入れ替えたところで、式の形自体に変わりはないですよね」 ↓ xとkを入…

デルタ関数の平面波展開

「ところで、デルタ関数は、次のように積分であらわすことができることが知られています」 「ここで、は、平面波(波面が平面の波)をあらわします。実際、オイラーの公式を用いると、と書くことができ、波数kで振動する波(正弦波)であることがわかります…

ディラックのデルタ関数とは

散乱の微小確率: 「ところで、分子のブラケットは、散乱振幅を使って、次のように書くことができます」 「ここで、は、デルタ関数と呼ばれる関数です。は、に相当するギリシャ語のアルファベットであり「デルタ」と発音します。デルタ関数は、イギリスの理…

ローレンツ不変性とは

「ここで、相対論的な効果を考慮すると、規格化定数は、で表されます。であり、は電子(陽電子)の相対論的なエネルギーをあらわします。このような規格化は、ローレンツ不変性を満たすため、不変規格化と呼ばれます」 相対論的な効果を考慮した規格化定数:…

規格化定数とは

「また、規格化定数を用いると、散乱の微小確率は次のようにあらわすことができます」 散乱の微小確率: 「規格化定数?」 「規格化定数は、粒子が存在する全空間で波動関数の確率が1(100%)となるように調整するために、式にかける定数のことをいいます」…

散乱の微小確率とは

「以上から、粒子の散乱確率は、ブラケットを用いて、次のように書くことができます」 散乱の微小確率: 「ここで、分子のは、入射粒子が散乱されて終状態に至る確率振幅の2乗をあらわします。また、分母のは、始状態の内積、すなわち入射粒子の確率振幅を…

なぜ波動関数の振幅の2乗が粒子の存在確率となるのか?

「ところで、散乱振幅はであらわされますが、散乱確率は、この散乱振幅を2乗したものに比例することが知られています」 散乱振幅: ↓2乗する 散乱確率 「どうして、散乱振幅を2乗したものが散乱確率になるのよ?」 「量子論において、電子や陽子などの素…

ブラケットの物理的な意味

「次に、ブラケットの意味について考えてみましょう。ブラケットを右側から左側へと読んでいくと、始状態の状態が散乱を受けて、散乱後の状態となった後に、終状態に至ることは、以前お話しました」 ブラケットを右側から左側へ読んでいく 1.始状態: ↓ 2…

ブラケットを読む順番

「横文字の文章を読むとき、ふつう左側から右側へと読んでいきますよね。でも、ブラケットは、逆に右側から左側へと読んでいきます。例えば、ブラケット は、始状態で始まり、終状態に終わるというように、右側から左側へと読んでいきます」 ブラケット ↓ 始…

S-演算子とS-行列

「始状態と終状態を定めたところで、次は散乱について考えましょう。散乱前の状態に作用して散乱後の状態に変化させる演算子をS-演算子と呼びます。ここで、は、ちょうど『S』が帽子(ハット)をかぶっているようにも見えるので『エスハット』と呼びます。ま…

始状態と終状態

始状態: 終状態: 俺の横にいた武者さんが突然立ち上がり、ホワイトボードまで歩いていったかと思うと、石原に向けて手を差し出した。「どうしたんですか、武者さん?」 驚きのあまり、戸惑いを隠せない石原。 「マーカーペン」 武者がぼそっと呟くように言…

演算子とは

「次に、下の式の意味について説明します」 石原は説明を続けた。 始状態: 終状態: 「は、粒子が全く存在しない(粒子数が0の)状態、すなわち真空状態を表します」 :粒子数が0の状態(真空状態) 「また、はそれぞれ、運動量p, -pの粒子を生成する演算子…

ブラケットの由来

「量子力学では、mおよびnを任意の数字として、を『ブラ』、を『ケット』と呼び、これらを2つあわせたを『ブラケット』と呼びます」 :ブラ :ケット :ブラケット 「ブラケットって、変な名前よね?」 一宮が正直な感想を漏らす。石原はにこやかに微笑んだ…

ブラケット記法とは

俺が一宮の巧妙な罠にはめられて絶望していると、「ちわーす!」という間の抜けたような声とともに、石原が部屋に入ってきた。 石原剣璽(いしはら・けんじ)は、俺と同じ高校一年生で、一見にこやかな顔つきをした優男だが、その実、食えない男だ。授業をサ…

無理難題をもちかけられたときに立場を180°コペルニクス転換させる女

「それじゃ、散乱の重要性がよく分かったところで、例の超絶難解な問題を解いて貰おうか」 俺はホワイトボードをぐるりと反転させて、一宮の眼前に問題を突きつけた。図1.1 超絶難解な問題1:以下の式を導け。ただし、:微分断面積、:立体角とする。 「ふ…

ラザフォードの散乱実験

「このように、ターゲットに当てたときに粒子が散乱される確率を調べることによって、そのターゲットの構造を知ることができるのです」 越野さんの説明を聞いても、一宮は、いまいち腑に落ちないような表情をしていた。その様子を見て俺は言った。「いかにも…