微分散乱断面積とは
「標的にぶつかった入射粒子を散乱する断面積σを散乱断面積と呼びましたが、入射粒子を散乱する散乱断面積σのうち、角度θの方向に散乱する断面積σ(θ)を微分散乱断面積と呼びます」
「上の図からもわかるように、粒子が散乱される角度θは、入射粒子が標的に当たる場所によって異なります。いいかえれば、粒子が散乱される角度θが変化すると、上図のA−B矢視断面図に示す微分散乱断面積σ(θ)も変化するのです」
微分散乱断面積σ(θ):角度θの方向に入射粒子を散乱する断面積
「具体的なイメージでいえば、100個の入射粒子のうち、角度30°の方向に散乱される粒子の数が3個とすれば、その微分散乱断面積σ(30°)は、3/100=0.03となります」
「微分って言葉、いまいちイメージがつかみにくいわね。数学者って、どうしてこう訳の分からない言葉を使いたがるのかしら?」
一宮が不平を漏らした。
「数学用語については、大まかなイメージをつかむといいです。『微』という文字には『細かい』という意味があり、『微分』には『細かく(微)分ける』というイメージがあります。この場合、入射粒子を散乱する散乱断面積を、粒子が散乱される角度θごとにさらに細かく分けるので、微分散乱断面積と呼ぶのです」
微分:細かく(微)分けるイメージ
「逆に、角度θによって細かく分けられた微分散乱断面積σ(θ)をすべて足し合わせれば、散乱断面積σになります」
微分散乱断面積σ(θ)を足し合わせる
↓
散乱断面積σになる
「ここで、は、微分散乱断面積σ(θ)をすべて足し合わせるという意味で『積分』と呼びます。この『積分」という言葉には、『細かく分けられたものを積み重ねる』というイメージがあるのです」
積分:細かく分けられたものを積み重ねる