4元運動量とは
「でも、この問題の場合、のように位置xの関数でなく、 のように波数kの関数だから、お前のいっていることは、逆じゃないのか?」
俺が指摘すると、石原は微笑んだ。
「この場合、xとkを入れ替えたところで、式の形自体に変わりはないですよね」
↓ xとkを入れ替える
「ですから、のように波数kの関数であっても、同様の関係が成り立つので問題ありません」
「ところで、って何よ?」
今度は一宮が訊ねた。
「は、平面波の積分からデルタ関数に変換する際にあらわれる係数と考えてください。もともと周期的な波の積分をデルタ関数に変換するので、その『つじつま合わせ』として、周期に関係するという係数があらわれるのです」
↓
「実際、デルタ関数に変換する前の粒子の散乱振幅をあらわすブラケットは、電子・陽電子の波数とミュー粒子・反ミュー粒子の波数を組み合わせた波数で振動する周期的な波の積分としてあらわされます。それゆえ、このような周期的な波の積分をデルタ関数に変換する際に、の係数があらわれるのです」
「でも、下の式を見ると、係数はではなく、となっているじゃない?」
「実は、散乱の前後で保存する量は、1次元の運動量ではなく、4元運動量であるため、4つの次元の分の係数があらわれるのです。なお、ここでの議論では、波数と運動量が等しいという自然単位系を用いていることに注意してください」
「4元運動量?」
「相対論的には、空間(3次元)は時間(1次元)で一体であると考えられ、4次元の時空間であらわされます。同様に、運動量も、運動量(3次元)とエネルギー(1次元)が一体であると考えられ、4次元の運動量であらわされるのです。これを4元運動量と呼びます。それゆえ、4つの次元が関わるため、デルタ関数への変換には、があらわれるのです」
相対論的には、運動量はエネルギーと同列に扱われ、4次元の運動量となる
4元運動量: