回転分極ベクトルとは
(1.3)
「次に、右側の行列要素について考える。相互作用ハミルトニアンは、電子と光子を電荷の強さで結合するエネルギーだから、行列要素は、電荷の強さに比例する。また、粒子は、進行方向に対して右回りか左回りのスピンをもつ」
「スピン?」
「スピンは、古典的には、粒子の『自転』に相当する。ここでは、次の図のようなスピンを考える」
Fig.1.3
「この図1.3の例では、電子とミュー粒子は、進行方向に対して右回りのスピンをもち、陽電子と反ミュー粒子は、進行方向に対して左回りのスピンをもつ。図1.3を見ても分かるように、電子と陽電子は、z方向に対して同じ方向のスピンをもつため、これらのスピンを足すと、z方向の角運動量成分になる。相互作用ハミルトニアンは角運動量を保存するから、これらの粒子と相互作用によってと結合した光子も、同じ角運動量を有する」
「?」
「は4元ベクトルで、成分が1で成分がとなり、それ以外は0となる」
「(アイ)?」
「は、純虚数」
「ちょっと、どうしていきなり虚数が出てくるのよ?」
一宮が憤慨するように言う。
「光が進む方向と向かいあって、電場が反時計回りに回転する左円偏光の式は、次のようにかける」
「これは、大きさが一定の電場が角振動数で回転しながら進む円偏光を表す。だから、成分が1で成分がの成分のベクトルは、z方向に進む光の左回りの回転をあらわす」
は、z方向に進む光の左回りの回転をあらわす4元ベクトル
「このようなベクトルを『回転分極ベクトル』と呼ぶ。この虚数は、成分の電場と成分の電場の位相がちょうど90°だけずれていることに対応する」
は成分の電場と成分の電場の位相がちょうど90°だけずれていることを示す
「これは、純虚数をかける度に、複素平面上で位相が90°回転することに対応する」