エネルギー・運動量テンソルの式から電磁気エネルギーの式の導出2
「ところで、ラグランジアン密度は、次のように表せたことを思い出してください」
「そこで、の添字をおよびに展開してみます」
「次に、添字をおよびに展開します」
「上式2行目から3行目への変形において、からの関係を用いました。また、の関係を用いた後に、(または、)および(または、)の関係を代入すると、上の式は次のようになります」
エネルギー・運動量テンソルを対称的にする方法3
「上のエネルギー・運動量テンソルの式において、添字を入れ替えた式が対称的となっているか調べてみましょう」
「ここで、およびの関係を用いました。次に、各項の添字を上げ下げします。それには、各項に計量テンソルをかけます」
「ちょっと、勝手に計量テンソルをかけてもいいの?」
一宮が胡散臭そうな目で越野さんを見た。
「その点なら問題ありません。計量テンソルとは逆行列の関係にあり、次の関係が成り立ちます」
「ここで、はクロネッカーのデルタで、のとき1、のとき0となる関数です。このとき、とすれば、次の関係式を導くことができます」
「したがって、式にを自由にかけることができます。そこで、エネルギー・運動量テンソルの式の各項に計量テンソルをかけて、各項の添字を上げ下げすると、次のようになります」
「これは添字を入れ替える前のの式と同じ形をしています。したがって、エネルギー・運動量テンソルが対称的であることがわかりました」
エネルギー・運動量テンソルを対称的にする方法
「次に、計量テンソルを用いて、エネルギー・運動量テンソルの添字を上付きにします」
「ここで問題なのは、通常の手続きでは、対称テンソルを導くことができないという点です。実際、上のエネルギー・運動量テンソルは、添字の入れ替えに対して対称的ではありません」
「どうしてテンソルが対称じゃないとダメなのよ?」
一宮が訊ねた。
「これは、下の一般相対性理論の基本方程式において、エネルギー・運動量テンソルが対称だからです」
一般相対性理論の基本方程式
「このエネルギー・運動量テンソルが対称テンソルでないという問題を解決すべく、テキストではの形での項を加えることを提案しています。ここで、の項は、最初の2つの添字において反対称(すなわち、)です。このようなものは自動的に発散がなくなり、は、同じく全体的にエネルギーと運動量が保存された等しく良好なエネルギー・運動量テンソルになるといっています」
「どうして発散がなくなるのよ?」
一宮が首を傾げた。
「実際、の添字を入れ替えた式は、の添字についての反対称性からとなります。それゆえ、全ての添字についての和をとると、添字を入れ替える前の式と入れ替えた後の式とがちょうどプラスマイナスになって打ち消し合うため、のように発散がゼロになるのです」