アインシュタインの縮約記法とは
「ここでは差し当たり、が実数の場であると考えます。mは、セクション2.3において質量であると解釈されますが、今は単なるパラメータであると考えます。ここで、ラグランジアンから運動方程式を導くことができます」
「このラグランジアンを、以前求めたオイラー・ラグランジュ方程式に代入すると、次のようになります」
「このって何よ?」
一宮が訊ねた。
「これは『アインシュタインの縮約記法(Einstein summation convention)』といって、式の上と下に同じ添字が出てきたら、添字の和をとることを意味します」
アインシュタインの縮約記法(Einstein summation convention)
式の上と下に同じ添字が出てきたら、添字の和をとる
「どうしてそんな省略をするのよ?」
「そうしたほうが、式が冗長にならないから、式を書くのが便利になるからだろ」
俺が横やりを入れると、一宮がにらみ返してきた。
「でも、そんなことしたら、ただの項か、それとも項の和をとったものか、さっぱり分からないじゃない!」
「だから、添字が上下セットで出てきたときは、とりあえずアイシュタインの縮約記法と思ってテキストを読むと、場の量子論のテキストを読むときに混乱しなくてすむと思います」
越野さんのアドバイス:
添字が上下セットで出てきたときは、アイシュタインの縮約記法と思って場の量子論のテキストを読むと、混乱がなくなる
「ほんと、面倒くさいルールね」
一宮は不満そうに呟いた。
「アインシュタインの縮約記法は、次のように、について、それぞれ和をとることを意味します。
「ここで、は計量テンソルと呼ばれる量であり、時空間の種類によって異なります。4次元のミンコフスキー空間の場合、計量テンソルは、しばしばイータで表されます。ミンコフスキーの計量テンソルは、、その他の成分は、となります」
ミンコフスキーの計量テンソル
、その他の成分は、
「ここで、項を計算してみます。微分演算子は、で定義され、4次元のミンコフスキー時空の場合、とすると、項は、1次元の時間座標tと3次元の空間座標x, y, zの2階微分の和をとったものとして、次のように書くことができます」
「このように、4次元のミンコフスキー空間では、時間と空間がマイナスの関係で結ばれているので、時間tと空間x, y, zの符号が逆になっていることに気をつけてください」
「ほんと、ややこしいわね」
一宮はため息をついた。