スーパーサイエンスガール

日々科学と格闘する理系高校生達の超絶難解な日常。

スペクトルとは

「次の課題は、ハミルトニアンからスペクトルを見出すことです」
「スペクトルって何よ?」
「スペクトルというのは、振動や波動現象において、ある物理量の時間的・空間的な変動を、sin関数などの基本的な振動成分に分解したとき、その各成分の強さをいいます」

スペクトル(spectrum):
振動や波動現象において、ある物理量の時間的・空間的な変動を、sin関数などの基本的な振動成分に分解したとき、その各成分の強さ

「一番広く知られたスペクトルが、光のスペクトル分解です。これは、Newtonが1666年に日光をプリズムで分解して、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の色帯を観測したことがその始まりとなっています。ここで、赤や橙などは、特定の振動数をもった光です。これらさまざまな振動数をもった光が重なり合って、日光が形成されているのです」

日光は、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫などのさまざまな振動数の光が重なり合ったもの

「また、複雑な振動や変動であっても、sin波やcos波のような基本的な振動数を有する波動の和として表すことができます。このように、ある関数を基本的な振動数の成分の和であらわしたものをフーリエ級数(Fourier series)と呼びます」

雑な振動や変動であっても、sin波やcos波の和として表すことができる
 ↓
フーリエ級数(Fourier series):関数を基本的な振動数の成分の和であらわしたもの

「クライン−ゴルドン場は、空間を満たす場が変動したものなので、日光と同様にさまざまな振動数の場の成分に分解することができます。例えば、古典的なクライン−ゴルドン場は、次のようにフーリエ級数で表すことができます」

{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\phi({\bf{x}},t)&=&\int\frac{d^3p}{(2\pi)^3}e^{i{\bf{p}}\cdot{\bf{x}}}\phi({\bf{p}}, t)
\end{eqnarray}
}

「ここで、指数関数 e^{i{\bf{p}}\cdot{\bf{x}}}がsin波やcos波のような基本的な振動数をもった波動に相当し、 \phi({\bf{p}}, t)は、その係数、すなわち、それぞれの波動成分の強さを表します。また、 \frac{1}{(2\pi)^3}は、位置空間から運動量空間への変換のための係数を表しています」
「要するに、場のスペクトルっていうのは、場の振動が、より基本的な振動数をもった波動の成分の和(積分)の形に表されたものというわけね」
 一宮が納得した様子を見て、越野さんが頷いた。
「実は、このような関係も、前回と同様に、ゲームのアナロジーで考えることができます」

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「ゲームでは、ディスプレイの各画素に色情報を与えますが、R(赤)、G(緑)、B(青)といった基本色は、基本的な振動数をもった波動に相当します。そして、これらの基本色が重なり合うことによって、機体の陰影の変化や爆発のエフェクトなどの複雑な色情報の変化が表現されているのです」

ゲームのアナロジー
基本色(R、G、B)
 ↓ 重なり合う
複雑な色情報の変化(機体の陰影の変化や爆発のエフェクトなど)

「ゲームと同様に、この現実世界も、実際には、単純な場の振動成分の重ね合わせからできているのです」