スーパーサイエンスガール

日々科学と格闘する理系高校生達の超絶難解な日常。

時空間のクライン‐ゴルドン場の物理的意味2

時空間のクライン−ゴルドン
{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\phi({\bf{x}}, t)&=&\int\frac{d^3p}{(2\pi)^3}\frac{1}{\sqrt{2\omega_{\bf{p}}}}\big(a_{\bf{p}}e^{-i{\bf{p}\cdot\bf{x}}}+a_{\bf{p}}^{\dagger}e^{i{\bf{p}\cdot\bf{x}}}\big) \mid_{p^0=E_{\bf{p}}}:\\
\pi({\bf{x}},t)&=&\frac{\partial}{\partial t}\phi({\bf{x}},t).
\end{eqnarray}
}
(2.47)

「時空間のクライン‐ゴルドン場の指数関数内の時間依存性には、プラスとマイナスの両方の符号が現れます。すなわち、 p^0が常に正であるとしたとき、 e^{-ip^0t}および e^{+ip^0t}の両方を見いだすことができます。仮に、これらが単一粒子の波動関数であるとすれば、これらは正負のエネルギー状態に相当します。より一般的に、これらを正および負の周波数モードと呼ぶことにします」

 e^{-ip^0t}:正の周波数モード(単一粒子の波動関数なら、正のエネルギー状態に相当)
 e^{+ip^0t}:負の周波数モード(単一粒子の波動関数なら、負のエネルギー状態に相当)

「粒子の生成演算子とここで示した波形の間の関係は、自由量子場に対しては常に有効となります。つまり、場の方程式の正の周波数の解は、その係数として単一粒子の波動関数の粒子を『破壊』する演算子を有します。一方、場の方程式の負の周波数の解は、正の周波数の解のエルミート共役となりますが、その係数として単一粒子の波動関数の粒子を『生成』する演算子を有します」

 e^{-ip^0t}:正の周波数モード→単一粒子の波動関数の粒子を『破壊』する演算子 a_{\bf{p}}と結合
 e^{+ip^0t}:負の周波数モード→単一粒子の波動関数の粒子を『生成』する演算子 a_{\bf{p}}^{\dagger}と結合

「ちょっと! どうして、相対論的な波動方程式には、正のエネルギー状態と負のエネルギー状態の両方が含まれているのよ? そもそも『負のエネルギー状態』って何よ?」
 一宮は理解しがたいというように頭を抱えた。
「この『負のエネルギー』について、テキストには『相対論的な波動方程式が正および負の周波数解を有するという事実は、量子論が正の励起エネルギーのみを含む要件と一致している』と記載されています。ですが、私にはこの意味がよく分かりませんでした」
「テキストの著者も、実はよく分かってないんじゃないの?」
「そうかもしれません。ですが、次のように考えてみてはどうでしょうか? 真空にエネルギーを与えると、粒子が生成しますよね。これはいいかえれば、真空中にエネルギーが吸収されて、粒子が生成されるということを意味します。ここで、『エネルギーが吸収される』ということは、『正のエネルギーがゼロになる』、すなわち、『負のエネルギー状態が生じるからそれと打ち消し合って、正のエネルギーがゼロになる』と考えることもできます。つまり、負のエネルギー状態と粒子の生成とが結び付くわけです。一方、粒子が消滅すると、真空中にエネルギーが放出されますよね。この場合、正のエネルギー状態と粒子の消滅とが結び付くわけです」

(1)真空中にエネルギーが吸収される→粒子が生成する
  『粒子の生成』と共に『負のエネルギー状態』が生じて、正のエネルギーがゼロになる
(2)粒子が消滅する→真空中にエネルギーが放出される
  『粒子の消滅』と共に『正のエネルギー状態』が生じる

「このように考えれば、負のエネルギーの意味も明確となるのではないでしょうか」