スーパーサイエンスガール

日々科学と格闘する理系高校生達の超絶難解な日常。

複素平面上の回転


{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\langle 0\mid [\phi(x), \phi(y)]\mid 0\rangle&=&\int\frac{d^3p}{(2\pi)^3}\frac{1}{2E_{\bf{p}}}\big(e^{-ip\cdot (x-y)}-e^{ip\cdot (x-y)}\big)\\
&=&\int\frac{d^3p}{(2\pi)^3} \bigg\{\frac{1}{2E_{\bf{p}}}e^{-ip\cdot (x-y)}\bigg|_{p^0=E_{\bf{p}}}\\
&&\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,+\frac{1}{-2E_{\bf{p}}}e^{-ip\cdot (x-y)}\bigg|_{p^0=-E_{\bf{p}}}\bigg\}\\
&=&_{x^0>y^0}\int\frac{d^3p}{(2\pi)^3}\int\frac{dp^0}{2\pi i}\frac{-1}{p^2-m^2} e^{-ip\cdot (x-y)}.
\end{eqnarray}
}
(2.54)


{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
&&_{x^0>y^0}\int\frac{d^3p}{(2\pi)^3}\int\frac{dp^0}{2\pi i}\frac{-1}{p^2-m^2} e^{-ip\cdot (x-y)}\\
&=&_{x^0>y^0}\int\frac{d^3p}{(2\pi)^3}\int\frac{dp^0}{2\pi i}\frac{-1}{(p^0+ E_{\bf{p}}) (p^0- E_{\bf{p}})} e^{-ip\cdot (x-y)}.
\end{eqnarray}
}

「ここで、複素平面上において、下図のように p^0= \pm E_{\bf{p}}の極を回避するような積分経路を考え、この積分経路に沿って積分変数 p^0積分を行います」

f:id:Dreistein:20150628063303p:plain

 x^0>y^0の場合、下図に示されるように、下方から半円を描くように近づく閉じた積分経路Cが考えられ、この積分経路C内に2つの極 p^0= \pm E_{\bf{p}}が含まれることがわかります。そこで、これらの極をとることによって、(2.54)式の2行目の式が得られます」

f:id:Dreistein:20150628065118p:plain

「どうして、 x^0>y^0の場合に、下から積分経路に近づくことになるのよ?」
 一宮の質問に、越野さんはしばし考え込んだ。
「複素積分では、複素平面上の回転は、指数関数 e^{i\theta}によって表されますよね。位相 \thetaがプラスのとき、反時計回りに回転し、位相 \thetaがマイナスのとき、時計回りに回転します」

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複素平面上の回転は、指数関数 e^{i\theta}によって表される
位相 \thetaがプラス→反時計回りに回転
位相 \thetaがマイナス→時計回りに回転

 x^0>y^0の場合、(2.54)式の最後の行の指数関数部分 e^{-ip\cdot (x_0-y_0)}の位相 -p_0\cdot (x_0-y_0)の符号がマイナスになるため、全体の積分経路Cも時計回り、すなわち下向きに進むルートになるのだと思います」