スーパーサイエンスガール

日々科学と格闘する理系高校生達の超絶難解な日常。

Clebsch-Gordan係数とは

「次に、電子 e^-陽電子 e^+のスピンの合成を考えると、 1/\sqrt{2}のClebsch-Gordan係数があらわれる」
「くれぶすごるだん……係数?」
 一宮が首を傾げる。
「Clebsch-Gordan係数は、角運動量を合成する際に得られる係数。ここで、電子 e^-および陽電子 e^+のスピン角運動量の大きさはそれぞれ、 j_1=\frac{1}{2}, j_2=\frac{1}{2}だから、それらのz方向のスピン角運動量の大きさはそれぞれ、 m_1=\pm\frac{1}{2}, m_2=\pm\frac{1}{2}となる。ここで、\frac{1}{2}は右回りのスピンをあらわし、 -\frac{1}{2}は左回りのスピンをあらわす」

図1.3
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「電子 e^-のスピン角運動量陽電子 e^+のスピン角運動量を合成した角運動量の大きさを jとし、合成角運動量のz方向の大きさを mとすると、合成角運動量状態ベクトルは、例えば、 \mid +\, -\rangle m_1=\frac{1}{2}, m_2=-\frac{1}{2}をあらわすとして、次のようにかける」


{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\mid j&=&1, m=1\rangle=\mid +\,  +\rangle\\
\mid j&=&1, m=0\rangle=\frac{1}{\sqrt{2}}(\mid + \, -\rangle+\mid -\,  +\rangle)\\
\mid j&=&0, m=-1\rangle=\mid - \, -\rangle\\
\mid j&=&0, m=0\rangle=\frac{1}{\sqrt{2}}(\mid +\,  -\rangle-\mid - \, +\rangle)\\
\end{eqnarray}
}

「この合成角運動量状態ベクトル 1 \frac{1}{\sqrt{2}}などの展開係数をClebsch-Gordan係数と呼ぶ。いま考えている系では、電子 e^-陽電子 e^+がいずれも進行方向に対して右回りのスピンを有することから、それぞれのz軸方向のスピン角運動量が互いに打ち消し合ってゼロになる。そこで、 m=0状態ベクトルの寄与だけを取り出せばいい」

 \uparrow\downarrow\rangle=(1/\sqrt{2})(\mid j=1, m=0\rangle+\mid j=0, m=0\rangle)

「古典的には、Clebsch-Gordan係数を求めるだけで十分だけど、相対論を考慮すると、4次元のローレンツ群で角運動量を足し合わせることになるため、スピンだけでなく、ローレンツ変換の特性を考慮に入れなければならない。このテキストによれば、反対称テンソルスカラーの重ね合わせはゼロになるため、4元ベクトルを質量のないフェルミ粒子の状態 \mid e^-_R e^+_R\rangleに結合させるClebsh-Gordan係数はゼロになるとのこと」
「反対称テンソル?」
 一宮が訊ねる。
「反対称テンソルについては、後で説明するとのこと。とりあえず、ここでは反対称性があるため、平均値をとるとトータルでゼロになると理解しておくといい」
「よくわからないわね」
「テキストが後で説明するといってるんだから仕方がない」
 一宮は顔を真っ赤にして憤慨した。
「まったく、肝心のところを後回しにするなんて、とんでもない著者ね。そんないいかげんな説明で読者が納得できるわけないじゃない。はっきりいって読者をなめてるわね。どこかでこのテキストの著者に出会うことがあったら、フル●ンにして木の上から逆さ吊りにしてやるわ」

 おいおい。仮にも女子高生が『フ●チン』などという、はしたない言葉を使うんじゃない。

 そんな一宮の憤慨ぶりも、まるでどこ吹く風といったように、武者さんは続けた。
「結局、振幅 M(RR\rightarrow RL)はゼロになり、始状態または終状態の全スピン角運動量が0となる他の組み合わせ、すなわち、始状態または終状態のスピンの組み合わせが、 RRまたは LLのいずれかになる他の11の振幅もゼロになる。それゆえ、ゼロにならない振幅は、次の4つの場合に限られる」

 M(RL\rightarrow RL)=-e^2(1+\cos{\theta})
 M(RL\rightarrow LR)=-e^2(1-\cos{\theta})
 M(LR\rightarrow RL)=-e^2(1-\cos{\theta})
 M(LR\rightarrow LR)=-e^2(1+\cos{\theta})