運動量密度とは
「一般化運動量は、ラグランジアンLを用いて、次のように定義されました」
一般化運動量(または共役運動量)
「一方、場で表したとき、一般化運動量pは、ラグランジアンを用いて、次のように定義することができます」
「これは、一般化座標が単に、場に置き換わっただけです。この式を計算してみると、次のようになります」
(2.4)
「1行目から2行目の変形では、変数yについての連続的な積分を、離散的な和で近似しています。ここで、(2.4)式のは、に共役な運動量密度(momentum density)と呼ばれる量です」
に共役な運動量密度(momentum density)
「なんで3行目からがに変わっているのよ?」
一宮が訊ねる。
「前にも説明したように、ラグランジアン密度は、空間に満ちた場の関数であるため、空間全体に広がっています。そして空間全体に満ちた場のうち、一部の場が時間的に変動すると、その変動が運動量として観測されます」
「それと、と何の関係があるのよ?」
「先ほどのゲーム画像の例でいえば、ディスプレイの画素が存在する範囲が、の範囲となります。つまり、はディスプレイ全体の画素の位置を指定するものです。そして、それぞれの画素について和をとっています。一方、一部の画素の色情報が時間的に変化することにより、下図のように、エネルギー弾が連続的に運動しているように見えます」
「このエネルギー弾を構成する画素の位置がに相当し、エネルギー弾の広がりの範囲がに相当するのです。上の(2.4)式の2行目から3行目への変形は、空間全体の広がりの範囲に存在する場のうち、運動量に寄与するの範囲だけを取り出すことに相当します。これを数学的に表現すると、次のように、とが等しい場合に1となり、その他の場合は0となる、デルタ関数を入力する操作に相当します」
ここで、テキストを眺めていた一宮が、突然何かに気づいたように顔をあげた。
「見てよ! このテキストをよく見ると、『momentum density』じゃなくて、『momerctum density』って書かれてるじゃないの!」
「それは……ただの誤植ではないでしょうか」
越野さんは戸惑ったような顔をした。
「モマークタムよ、モマークタム!」
まるで鬼の首をとったかのように、一宮が得意気になってはしゃいだ。
子供のように嬉しそうにはしゃぎまわる一宮を見て、俺は思った。
こいつは、どういうわけか、人の揚げ足取りになると、天才的に勘が働く。はたからみると、ある意味、エスパーじゃないかと思うほどだ。その能力をもっと有用なことに使えないのか、お前は……。