スーパーサイエンスガール

日々科学と格闘する理系高校生達の超絶難解な日常。

複素スカラー場のラグランジアン

「もう1つのマイナーな例としては、次のようなラグランジアンを考えてみます」

{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\mathcal{L}=|\partial_\mu\phi|^2-m^2|\phi|^2
\end{eqnarray}
}
(2.14)

「ここで、 \varphiは、複素数値の場です。このラグランジアン \mathcal{L}運動方程式オイラーラグランジュ方程式から求めてみます」

オイラーラグランジュ方程式(場の方程式)
{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
 \partial_\mu\bigg(\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_\mu\phi)}\bigg)-\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial\phi}&=&0
\end{eqnarray}
}
(2.3)

「ここで、複素数の絶対値の定義 |z|^2=z^\ast z z^\astとzとは複素共役。例えば、 z=a+biのとき、 z^\ast=a-biとなる)から、(2.14)式は、次のように書くことができます」

{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\mathcal{L}=|\partial_\mu\phi|^2-m^2|\phi|^2=(\partial^\mu\phi)^\ast(\partial_\mu\phi)-m^2\phi^\ast\phi
\end{eqnarray}
}
(2.14)

「この(2.14)式を(2.3)式に代入すると、次のようになります」

{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\partial_\mu\bigg(\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_\mu\phi)}\bigg)-\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial\phi}
&=&\partial_\mu(\partial^\mu\phi)^\ast+m^2\phi^\ast\\
&=&(\partial_\mu\partial^\mu+m^2)\phi^\ast=0\\
&=&(\partial^\mu\partial_\mu+m^2)\phi^\ast=0
\end{eqnarray}
}

 (\partial^\mu\partial_\mu+m^2)\phi^\ast=0複素共役をとることにより、(2.7)式で求めたクライン−ゴルドン方程式が導かれることがわかります」

クライン−ゴルドン方程式
{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\bigg(\frac{\partial^2}{\partial t^2}-\nabla^2+m^2\bigg)\phi=0 \,\,\,\,\,\,\,\,\,  \textrm{or} \,\,\, \,\,\,\,\,\,  (\partial^\mu\partial_\mu+m^2)\phi=0
\end{eqnarray}
}
(2.7)

「このラグランジアン \mathcal{L}は、変換 \varphi\rightarrow e^{i\alpha}\varphiのもとで不変です。なぜなら、ラグランジアン \mathcal{L}は、場の2乗 |\varphi|^2の項を含みますが、 e^{i\alpha}\varphi複素共役は、e^{-i\alpha}\varphi^\astとなるため、これらの積をとっても、 e^{i\alpha}\varphi\times e^{-i\alpha}\varphi^\ast=\varphi\varphi^\ast=|\varphi|^2となって元の場の2乗の積に戻るからです」