スーパーサイエンスガール

日々科学と格闘する理系高校生達の超絶難解な日常。

正準運動量密度の導出

「クライン−ゴルダン方程式は、量子力学的な波動方程式ではなく、古典的な波動の振る舞いをあらわすマクスウェル方程式と同様に『古典的』な場の方程式です。ところで以前、場\varphi(x)に共役な正準運動量密度 \pi(\bf{x})は、次のように定義されることをお話しました」

{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\pi(\bf{x})&\equiv&\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial\dot{\phi}(\bf{x})}
\end{eqnarray}
}

「一方、ラグランジアン \mathcal{L}は、次のように書けます」

{ \displaystyle
\begin{eqnarray}
\mathcal{L}&=&\frac{1}{2}\dot{\phi}^2-\frac{1}{2}(\nabla\phi)^2-\frac{1}{2}m^2\phi^2
\end{eqnarray}
}

「このラグランジアン \mathcal{L} \pi(\bf{x})に代入すると、 \pi(x)=\dot{\phi}(x)となります」

「ねえ、ちょっと変じゃない?」
「何がおかしいのですか?」
 一宮は、ほとんどテキストの頁に顔を押しつけるようにして、テキストを凝視していた。
「この行を見てよ!」

超絶難解な某テキストから一部抜粋
f:id:Dreistein:20150117104502p:plain

 一宮の意図が分からず、俺たちは皆、ぽかんと一宮を見つめていた。
「だから、何が言いたいんだお前は?」
「まだ分からないの? あんたって、ほんと目が悪いのね」
「目が悪くて悪かったな!」
「しょうがないわね……。それじゃよく見て! この式の部分を思い切り拡大すると、こんな風になるわ!」
 そういって、一宮は両手を伸ばし、俺の顔に押しつけるように思いっきりテキストを近づけてきた。

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「ほら! よく見て! 『運動量密度』を表すのに、どこにも時間微分を表すドット( \cdot)が \phiの上に書いてないじゃないの! これは立派な間違いよ!」
 一宮は、勝ち誇ったように胸を張った。
「それは多分、誤植だと思いますけど……」
 越野さんは、どう対処したらよいか分からないような、戸惑った顔をしていた。

 お前という奴は、他人の『揚げ足とり』になると、ほんとうに無駄なまでに勘が働くな……。その能力をもう少し建設的な方向に使えないのか?