スーパーサイエンスガール

日々科学と格闘する理系高校生達の超絶難解な日常。

場の量子論

エネルギー・運動量テンソルの導出

「ここで、ラグランジアンの無限小の平行移動の式と、以前求めたラグランジアンの変換式(2.10)とを比較してみます」 (2.10) 「このとき、となって、がゼロでないことが分かります。ここで、場の無限小の平行移動の式を(2.9)式と比較します」 (2.9) 「これか…

クロネッカーのデルタを用いた添字の変換

「無限小の平行移動によるラグランジアンの変換も、場と同じように書くことができます」 「ちょっと待ってよ! なんでいきなりが湧いてくるのよ!」 一宮が怒り心頭といった感じで叫び声をあげた。 お前な、ちょっとした式変形につまづくたびに、いちいちそ…

無限小の平行移動

「ネーターの定理は、平行移動や回転のような時空間の変換にも適用することができます。無限小の平行移動は次のように書けます」 「上式は、4次元時空間上の位置座標から無限小の距離だけ移動することを意味します。また、無限小の平行移動は、場の変換とし…

複素スカラー場のネーターカレントの導出

「次に、複素スカラー場のネーターカレントを導いてみます」 (2.15) 「ここで、およびは独立な場として扱います。また、これらはの実数および虚数部分と扱うこともできます。この場合、以前求めた(2.12)式において、の項の他に、の項も考える必要があります…

テイラー展開の直観的なイメージ

「教科書みたいな天下りの説明はもうたくさんだわ! そもそもどうして、テイラー展開やマクローリン展開みたいな関係が成り立つのよ?」 テイラー展開(Taylor expansion) マクローリン展開(Maclaurin expansion) 「それは難しい質問ですね……」 一宮の質…

テイラー展開とは

「次に、変換のもとで複素スカラー場のラグランジアンが不変の場合を考えてみます」 (2.14) 「以前、場の無限小の変換は次のような形に書けることをお話しました」 (2.9) 「ここで、この(2.9)式と変換を比較すると、(2.9)式の右辺の第2項は次のようになりま…

複素スカラー場のラグランジアン

「もう1つのマイナーな例としては、次のようなラグランジアンを考えてみます」 (2.14) 「ここで、は、複素数値の場です。このラグランジアンの運動方程式をオイラー・ラグランジュ方程式から求めてみます」 オイラー・ラグランジュ方程式(場の方程式) (2.…

運動項のみのラグランジアンから生じる保存則

ネーターの定理(Noether's theorem) 系に連続的な対称性が存在するとき、それに対応する保存則が存在する 「ネーターの定理によって生じる保存則の一番簡単な例は、ラグランジアンが運動項のみを有する場合です」 「運動項って……なんだったかしら?」 一宮…

ネーターの定理とは

「このように、系に連続的な対称性が1つ存在するとき、それに対応する保存則が1つ存在します。これをネーターの定理(Noether's theorem)と呼びます」 ネーターの定理(Noether's theorem) 系に連続的な対称性が存在するとき、それに対応する保存則が存…

ネーターカレントとは

(2.12) 「上の結果は、の微分がゼロ、すなわち、ネーターカレント(電流)が保存されることを意味しています。また、2以上の場に対称性が存在する場合は、の第1項は、それぞれの場に対する同様の項の和の形に置き換えられます」「ネーターカレントって、な…

ネーターカレントの保存の式の導出

ラグランジアンの微小変換 「ここで、微分には、という関係があります。これは、の積の微分は、を固定してを微分した場合と、を固定してを微分した場合の和に等しいことを意味します」 の積の微分=を固定してを微分+を固定してを微分 「この微分の関係式に…

チェインルールとは

「次に、ラグランジアンの微小な変化を求めてみます。ラグランジアンは次のように、場の項と場の微分の項の2つからなることは、以前もお話しました」 「そのため、ラグランジアンの微小変化は、次のように書くことができます」 「なんでそんな風にかけるの…

ラグランジアンの不定性とは

「ところで、ガウスの発散定理の説明でもお話したように、表面項は、の形をしています。そこで、この項をと書き、微小量をとすると、ラグランジアンの微小変換量は、と書くことができます。これから、ラグランジアンの変換の式は次の(2.10)式のようになりま…

ハミルトニアンの物理的な意味

「次に、ハミルトニアンの物理的な意味について考えてみます。まず、(2.5)式のハミルトニアンに(2.6)式のラグランジアンを代入してみます」 (2.5) (2.6) 「次に、前回求めたの関係を使うと、ハミルトニアンは、次のように書くことができます」 (2.8) 「一般…

クライン-ゴルドン方程式の導出

「ここで、上のような上付きの添字と下付きの添字がセットになったものは、『内積』を表し、ローレンツ変換に対して不変な量となることが知られています。また、ラグランジアンもローレンツ変換に対して不変な量なので、その運動項は、実際には次のように上…

アインシュタインの縮約記法とは

「ここでは差し当たり、が実数の場であると考えます。mは、セクション2.3において質量であると解釈されますが、今は単なるパラメータであると考えます。ここで、ラグランジアンから運動方程式を導くことができます」 「このラグランジアンを、以前求めたオイ…

スカラー場とは

「結局、ハミルトニアンは、を使って、次のように書くことができます」 「この式を連続的に表現すると、次のようになります」 (2.5) 「ここで、は、ハミルトニアン密度と呼ばれます。なお、テキストによれば、このセクションの最後で、ハミルトニアン密度の…

運動量密度とは

「一般化運動量は、ラグランジアンLを用いて、次のように定義されました」 一般化運動量(または共役運動量) 「一方、場で表したとき、一般化運動量pは、ラグランジアンを用いて、次のように定義することができます」 「これは、一般化座標が単に、場に置き…

ハミルトニアンとは

「ラグランジアンLを用いると、ハミルトニアンHは、と表されます」 「ハミルトニアンって何よ?」 「ハミルトニアンは、一言で言えば、系全体のエネルギーを特定の座標系によらない一般化座標で表したものです」 ハミルトニアン 系全体のエネルギーを特定の…

共役運動量とは

「ラグランジュ形式の場の理論についてお話した後は、ハミルトン形式の場の理論についてお話します。ラグランジュ形式の場の理論は、全ての式があらわにローレンツ不変であるため、特に相対論的力学に適していますが、このテキストでは、第1部を通してハミ…

オイラー・ラグランジュ方程式の導出法

(2.2) 「以上説明したように、(2.2)式の最終行の第3項は、ガウスの発散定理により、積分の4次元時空領域の境界上の面積分に変えることができます」 ガウスの発散定理 「でも、なんて、(2.2)式のどこにも書いてないじゃないの?」 一宮が不審そうな顔で訊ね…

ガウスの発散定理とは

(2.2) 「ここで、(2.2)式において、微分の公式を用います。この公式は、との積の変化は、を固定してのみを変化させた場合と、を固定してのみを変化させた場合の和に相当することを意味します。ここで、とおくと、次の式が得られます」 「この関係を用いると…

全微分とは

「ラグランジアン密度の作用積分Sは、次のように書くことができます」 (2.1) 「このテキストの主題は、場の理論なので、以下、を単に、ラグランジアンと呼ぶことにします。前回お話したように、最小作用の原理は、時間との間で、始点Oから終点Pに系が発展す…

ラグランジアン密度とは

「一方、局所的な場の理論では、ラグランジアンLは、ラグランジアン密度の空間積分として書くことができます。ラグラジアンLと区別するため、ラグラジアン密度はLの花文字で表されます。ラグランジアンLは、一般化座標とその時間微分の関数で表されますが、…

ラグランジアンの物理的な意味

次のセクションからは、越野さんが再び解説を行うこととなった。 「セクション2.2では、場の量子論の議論で必要となる古典的な場の理論の定式化を見てみます。では、最初に、ラグランジュの場の理論を見てみましょう。古典力学の基本的な量は、作用Sと呼ばれ…

超光速の粒子は実在する?

相対論的な粒子の確率振幅 「このように、光円錐の外側の領域において、相対論的な粒子の伝搬振幅U(t)は小さくなりますが、それでもゼロにはならないことがわかります。これは、超光速の粒子が存在するということを意味しています」 ここで石原は、意味あり…

停留値法による近似計算の例

石原は満足そうに笑みを浮かべながら、俺たち一人一人をゆっくりと見渡した。 「停留値法においては、停留値の近傍の波の位相の変化は緩やかなため、その積分の寄与が大きく現れ、一方、停留値以外の波の位相の変化は激しいため、波が互いに打ち消し合ってそ…

コーシーの積分定理の使い方

「ちょっと待ってよ! 問題の計算って、そもそも実数の積分計算でしょ?」 相対論的な粒子の確率振幅U(t) 「なのに、なんで複素数の積分が出てくるのよ?」 一宮の質問に、石原は切れ長の目を細めつつ、笑みを浮かべて頷いた。 「聡明な一宮さんが、そのよう…

コーシーの積分定理とは

「ここで、実際に停留値を求めてみましょう。微分が変化率を表すことに注目すると、停留値は、位相関数を運動量pで微分したときにゼロになる値に相当します」 「この式を運動量pについて解くと、停留値が求められます」 「したがって、位相関数f(p)は、で停…

停留値法とは

相対論的な粒子の確率振幅U(t) 「次に、位相関数を考えます。前回、波の位相とは、時間とともに周期的に変化する波において、波の変化の段階(フェーズ)を表す指標となる角度であり、やのに相当するという話をしました」 波の位相:時間とともに周期的に変…