スーパーサイエンスガール

日々科学と格闘する理系高校生達の超絶難解な日常。

場の量子論

時間的な伝搬粒子のクライン‐ゴルドン場の振幅の導出3

「ここで、時間的な伝搬粒子のクライン‐ゴルドン場の振幅の大きさを実際に評価してみましょう」 「について、の極限において、指数関数からの寄与は指数関数的に増大するため、からの寄与に比べてからの寄与は無視できます。それゆえ、と書くことができます…

時間的な伝搬粒子のクライン‐ゴルドン場の振幅の導出2

「次に、上の積分を計算するため、積分変数をからに変換します。ここで、をで微分すると次のようになります」 「この関係を代入すると、は、次のように簡単な式になります」 「次に、から、となるため、この式を上の式に代入すると、エネルギーEについてのの…

時間的な伝搬粒子のクライン‐ゴルドン場の振幅の導出1

「前回の計算により、時空間のクライン‐ゴルドン場の伝搬粒子の振幅は、次のようになることが分かりました」 (2.50) 「この形の積分は、(2.40)からローレンツ不変になることをすでに説明しました」 (2.40) 「次に、のいくつか特定の値について、実際にこの積…

時空間のクライン‐ゴルドン場の伝搬粒子の振幅の導出2

↓ 、、、 「前回の考察から、上の4つの項のうち、唯一ゼロにならない項は、となります。この結果を踏まえて、実際にを計算してみましょう」 時空間のクライン−ゴルドン場 (2.47) 「計算には、上の(2.47)式を代入します」 「ここで、次の(2.29)式を用いてを…

時空間のクライン‐ゴルドン場の伝搬粒子の振幅の導出1

因果律「それでは、次に、因果律の問題について考えてみたいと思います。Heisenberg描像において、yからxに伝搬する1粒子の振幅は、と書くことができます。ブラケットを右から左に読む、という規則に従えば、は、yに1粒子が存在する状態からxに1粒子が存…

時空間のクライン‐ゴルドン場の物理的意味2

時空間のクライン−ゴルドン場 (2.47) 「時空間のクライン‐ゴルドン場の指数関数内の時間依存性には、プラスとマイナスの両方の符号が現れます。すなわち、が常に正であるとしたとき、およびの両方を見いだすことができます。仮に、これらが単一粒子の波動関…

時空間のクライン‐ゴルドン場の物理的意味1

「ここで、(2.47)式の物理的な意味について考えてみましょう」 (2.47) 「(2.47)式は、量子場の粒子と波の二重性の解釈を明確にします。すなわち、は、励起された場の量子である粒子を生成・消滅させるヒルベルト空間演算子として記載される一方で、は、クラ…

時空間のクライン‐ゴルドン場

(2.48) 「上の(2.48)式の左右からそれぞれおよびをかけて、時間に依存した式に書き換えることによって、次の(2.49)式が成り立つことがわかります」 (2.49) 「なお、、としました。上の式の右辺は、のみが含まれ、時間に依存していないように見えますが、実際…

運動量演算子と生成・消滅演算子の関係式の導出

「下の運動量演算子と生成・消滅演算子との交換関係から、ととの間の関係式を求めてみましょう」 「上の式から、次の式が導かれます」 「ここで、上の消滅演算子の関係式からを計算してみます」 「また、についても同様に計算することができます」 「この関…

運動量演算子と生成・消滅演算子との交換関係

「次に、Hの代わりにPについて同様の操作を実行して、ととを関連付けることを考えてみます。(2.46)式と同様に、次の(2.48)式を示すことができます」 (2.48) 「ここで、であり、小文字のpと異なります」 「同じ文字なのに、小文字と大文字とで異なるなんて、…

クライン‐ゴルドン場とその運動量密度の時間に依存した表式

「次に、ハイゼンベルク演算子の望ましい式を導いてみましょう。ここで、時間に独立なSchrodinger描像の昇降演算子を表すため、記号を常に用いることにします。具体的な計算方法としては、(2.25)式の左右からそれぞれをかけて、(2.43)式の関係を用います」 (…

ハミルトニアンと生成・消滅演算子の関係式の導出

「上の関係を用いることによって、次の関係式を導くことができます」 (2.46) 「ちょっと! どうしてそんな関係式が成り立つのよ?」 一宮が理解できないといった風に、頭をかきむしった。 「上の計算には、少し飛躍があるかもしれませんね。でも、(2.46)式は…

ハミルトニアンと生成・消滅演算子との交換関係

「ところで、およびの時間依存性は、生成・消滅演算子の観点からより深く理解することができます。例えば、(2.32)式およびの関係から、ハミルトニアンと消滅演算子との間には、次の関係が成り立ちます」 (2.32) 「それゆえ、任意のnに対して、は次のようにな…

クライン‐ゴルドン方程式の導出

「以上の結果をまとめると、次のようになります」 「次に、の式の2階微分を行うことによって、これらの2つの式を組み合わせてみましょう」 「これから、次の(2.45)式を導くことができます」 (2.45) 「これはまさしく、クライン-ゴルドン方程式となっていま…

運動量密度の時間依存性

「クライン‐ゴルドン場の時間依存性と同様に、運動量密度 の時間依存性も、Heisenbergの運動方程式から同様に計算できます」 (2.44) 「ここで、上式の右辺の交換子の右側の第1項に着目すると、の形を持ちますが、交換子の公式および(2.20)式から、次のよう…

クライン‐ゴルドン場の時間依存性

(2.44) 「Heisenbergの運動方程式に(2.8)式のハミルトニアンHを代入すると、およびの時間依存性を計算することができます」 (2.8) 「ここで、上式の右辺の交換子の右側の第3項に着目すると、の形を持ちますが、交換子の公式および(2.20)式から、次のように0…

Heisenbergの運動方程式

2.4 時空内のクライン-ゴルドン場「前の節では、Schrodinger描像のクライン-ゴルドン場を量子化し、結果として生じた理論を相対論的粒子の観点から解釈しました。この節では、Heisenberg描像に切り換えて考えることにします」 「どうしてHeisenberg描像で考…

状態pの一粒子波動関数の位置空間表示

(2.41) 「非相対論的な場合と同様の解釈を突き進めると、演算子が真空に作用すると、位置xに粒子が生成されるものとみなすこともできます」 真空に演算子が作用する → 位置xに粒子が生成される 「この解釈はさらに、(2.35)式を用いて、以下の計算をすること…

位置xの固有状態の相対論的な表式

(2.40) 「(2.40)式の積分は、f(p)がローレンツ不変なら、もローレンツ不変になるという意味において、ローレンツ不変の3元運動量の積分です。この積分は、図2.2に示されるように、4元運動量空間における双曲面の分枝上にあるものと考えられます」 図2.2 ロ…

ローレンツ不変3元運動量積分公式の導出

「以上述べたローレンツ不変規格化においては、他の場所においてで割る必要があります。例えば、1粒子状態の完備関係式は、次のようになります」 (2.39) 「(2.39)式において、左辺の演算子は、1粒子状態の部分空間内の恒等演算子であり、ヒルベルト空間の…

ローレンツ変換のユニタリ演算子による表現

「前回お話したように、ローレンツ変換は、量子状態のヒルベルト空間において、ユニタリ演算子として実行されます」 (2.35) 「また、規格化条件(2.35)式には、次のような意味があります」 (2.37) 「上式は、状態に、ユニタリ演算子を作用させた結果、ローレ…

ローレンツ不変規格化とは

「ローレンツブーストのもとでは、一般に、体積が不変ではありません。例えば、静止座標において、体積Vの箱をローレンツブーストすると、ブーストされた座標では、ローレンツ収縮によって、箱の体積は ()になることが知られています」 体積Vの箱 ↓ ローレ…

ヒルベルト空間とユニタリ演算子

「ところで、ローレンツ変換は、量子状態のヒルベルト空間において、ユニタリ演算子として実行されます」「ヒルベルト空間?」 一宮が首を傾げた。 「私たちの住む現実世界の空間は、3次元ユークリッド空間(Euclidean space)であると考えられています。こ…

デルタ関数のローレンツブースト

「ここで、ある慣性系Aから見て、別の慣性系Bが方向に-Vの速さで進む場合を想定します。このとき、 とすると、ローレンツブーストにより、運動量とエネルギーは、次のように変換されることが一般的に知られています」 「ここで、デルタ関数のローレンツブー…

ローレンツ変換とローレンツブーストの違い

「次に、規格化について考えてみます」 「規格化って何よ?」 一宮が口を尖らせた。 「『規格化(normalization)』というのは、ベクトルに適当な定数をかけて、ベクトルの長さ(『ノルム(norm)』と呼びます)を1にする操作をいいます」 『規格化(normal…

ボース粒子とは

「エネルギーは1粒子のエネルギーを表すものと考えられるため、今後はを(または、単にE)と書くことにします。ここで、エネルギーが常に正:となることに注意してください。この形式により、粒子の統計を決定することが可能になります」 「粒子の統計?」 …

クライン−ゴルドン粒子とは

「生成演算子は、真空状態に作用して、運動量およびエネルギーをもった状態を生成します。この状態にさらに生成演算子等を作用させると、運動量およびエネルギーをもった状態を生成します。以上をまとめると、下のようになります」 :真空状態 ↓生成演算子を…

クライン-ゴルドン場の全運動量演算子の計算3

「ここで、上式右辺の第1項および第4項は、pの符号を入れ替えたとき、それぞれおよびとなり、全体として符号がプラスからマイナスに入れ替わります。それゆえ、これらはpについて奇関数なので、からのpの積分において消去されます。したがって、右辺の第2…

クライン−ゴルドン場の全運動量演算子の計算2

「ここで、全運動量演算子の各項を、指数関数をかけた項に展開すると、次のようになります」 「また、などの積分変数の置換によって、各項のまたはの符号を適宜変換すると、次のようになります」 「上式をxについて積分すると、デルタ関数が現れます」 「次…

クライン−ゴルドン場の全運動量演算子の計算

「ここで、調和振動子についてしたように、この理論のスペクトルを書くことができます。すべてのpに対して、となる状態は、基底状態または真空状態であり、(2.31)式の無限大の定数を省略すると、エネルギーE=0となります。他のすべてのエネルギー固有状態は…